「目的効果基準」と「新しい基準」(その1)

 昨日、あとで引用する日経新聞の社説の表現に「???」だったので、今日は、まずは、web上の記事の引用をさせていただきます。m(_ _)m




1.新聞記事の引用

 (1)日経新聞(日経ネット)

 憲法で定める政教分離原則をめぐる裁判で、最高裁では2例目になる違憲判決があった。「一般人の目から見て、特定の宗教を援助していると評価されるかどうか」との新たな基準によって違憲判断をした点が注目される。

 〔中略〕

 政教分離原則に反するか否かを、裁判所は、1977年に最高裁が津地鎮祭訴訟で示した目的効果基準に照らして判断してきた。「国などの行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助、助長または圧迫、干渉になるか否か」の物差しにあてるのである。

 政治的な影響が大きい靖国神社護国神社を巡る訴訟ではない今回の事例について、目的効果基準だけ違憲性を考えてみよう。

 すると、藤田宙靖裁判官が補足意見で指摘したように「宗教施設としての存在感が大きくない点を重視するなら、市有地の無償提供が直ちに他の宗教あるいはその信者らに対する圧迫、脅威となるとまではいえず、あえて憲法違反を問うまでのことはない」とする判断も可能だろう。

 明らかに宗教施設である神社に市が敷地を無償で提供する行為が政教分離原則に反しない、という不自然な結論にたどり着くのを避けるために最高裁は、目的効果基準のみにこだわらず「一般人の目」という新たな物差しを持ち出したようだ。政教分離規定を厳しく解釈した判決といえよう。

  引用元:日経ネットの“社説2 政教分離を厳しくみた最高裁(1/21) ”

 疑問点の1つは、津地鎮祭訴訟で示したとされる「目的効果基準(物差し)」と、今回持ち出したとされる「新たな基準(物差し)」の関係です(両者を区別しませんでしたが、上記引用の際に太字にしました。)。

 もう一つは、後日説明することにして、まずは、「目的効果基準」と「新たな基準」に着目して、以下、別のものを引用することにします。



 (2)東京新聞(TOKYO Web)

 これまで政教分離訴訟の判決では、行為の目的や効果が社会通念上、認められる範囲にあるかどうかを判断する「目的効果基準」(津地鎮祭訴訟・大法廷判決=七七年)が踏襲されてきた。しかし、今回の判決は、市有地の無償提供が、宗教団体への公金支出などを禁じた憲法八九条に違反するかについて「宗教施設の性格や無償提供の経緯、一般人の認識などの諸般の事情を考慮し、総合的に判断すべきだ」とする新たな基準を示した。

  引用元:“東京新聞:市有地に神社 違憲 砂川・政教分離訴訟 『一般人の評価』新基準:社会(TOKYO Web)”

 これまで「目的効果基準」が踏襲されてきたけれど、今回の判決は、「新たな基準」だとしています。



 (3)MSN産経

 津市が市体育館の起工式を神道形式で行い、費用が公費から支出されたことが違憲かどうかが問われた津地鎮祭訴訟で、大法廷は昭和52年、違憲か合憲かの判断基準として、「目的効果基準」を示した。

 これは完全な政教分離は不可能との前提で、「行為の目的や効果が、社会・文化的諸条件に照らし、信教の自由確保との関係で、相当とされる限度を超える場合には許されない」と判示。起工式の目的は工事安全を願うなどの世俗的なもので、効果は神道の援助や他宗教の圧迫ではないとして、合憲と判断した。

 この基準が過去の判決で踏襲されており、基準に照らして違憲と判断されたのは、靖国神社の祭(さい)祀(し)にあたって、玉ぐし料などを公金から支出したことの是非が争われた「愛媛玉ぐし料訴訟」(平成9年)だけだった。

  引用元:“過去の基準は「目的効果」 政教分離訴訟 - MSN産経ニュース”

 最高裁は今回、違憲か合憲かを判断する“ものさし”として、新たに「一般人の評価」などを重視し、総合判断する必要があるとの基準を提示した。

 政教分離をめぐる訴訟では、これまで「行為の目的が宗教的意義を持ち、その効果が宗教に対する援助や圧迫になるかどうか」という「目的効果基準」に照らして、違憲か合憲かが判断されていた。

 新基準が打ち出されたのは、地鎮祭や慰霊祭、公費からの玉ぐし料支出など、「誰の、いつの行為か」を特定して判断されるケースが多かった従来の訴訟と、今回の訴訟が異なっていたからだとみられる。

  引用元“新基準、政教分離訴訟にどう影響? - MSN産経ニュース”

 2つの記事を連続して引用しましたが、前者においては愛媛玉ぐし料訴訟も「目的審査基準」を踏襲、後者においては「新基準」を採用したという趣旨のことが書かれていることが確認できるでしょう…。



 (4)共同通信

 宗教的施設に公有地を無償提供する是非について「施設の性格や無償提供の経過と態様、一般人の評価などを考慮し、社会通念に照らし判断すべきだ」と指摘。政教分離訴訟で「目的と効果」を検討してきた従来の枠組みを補完する新たな判断基準を示した。

  引用元:“最高裁、市有地の神社は「違憲」 新判断基準で高裁に差し戻し - 47NEWS(よんななニュース)”

 新基準は、従来の枠組み(目的効果基準)を補完する判断基準として、位置づけられていることが確認できるでしょう…。



 以上、「わざと」、47NEWSに加盟のいくつかの新聞社のサイトから記事を引用しましたが、「目的効果基準」と「新たな基準」の【位置づけ】が、微妙に違う気がしませんか?

 まあ、こんなこと、新聞記事で比較する必要はない気もしないでもないし、細かすぎる気もしないでもないのですが、最初の日経ネットの社説がどうも引っかかったもので、本シリーズを書こうと思い立った次第です…(^^;。

 次回は、実際の判決文を紹介するつもりです(まだ構想を考えていないので予定は未定…。)。