「筋の通った答案」とLRAの基準

 改めてエントリーを書く必要はないのではないか、書くとしても長々と書くのではなくて、「AとBを読んでください」と一行で書けるかもしれないけれど、ダラダラと書いてみるテスト。(´・ω・`)

 別に、木村先生に対して直接返答しているつもりはなくて、読んでくださった方が、今後どこかの場面で参考にしていだければ幸いと思う程度です…。

 結局のところ、泥縄状態ですし、1週間程度では大した進歩もなく、調査不足・勉強不足なところ*1が多々あるかもしれませんが、ご容赦願います。m(_ _)m(2つ前の日記の文章を若干流用。)




1.「筋の通った答案」

 2つ前の日記のコメント欄から、木村先生のコメントを引用。

実際の国家試験の採点基準がどうなってるのかよく知りませんが、
筋が通っていれば、誰が言っていない議論でも
問題ないかと思われますし、
そういう採点基準をとるべきだと思われます。

 私も「実際の国家試験の採点基準がどうなっているのか」よくわかりません。(´・ω・`)

 コメント欄で同意したように、筋が通っていれば、誰も言っていない議論でも問題ないと思います。

 ただ、極端な事例はさておき*2、(択一の文脈だと思われるけれど)そこそこ有名な教科書の記述が、試験に不利な可能性はある*3

 本問において、どのような筋、どの程度の内容を書けば、ダイジョウブなのだろうか?



2.LRAの基準の論証パターン

 私の問題意識としては、LRAの基準に至る論証、つまり、「慎重な分析の上で、表現内容規制か内容中立規制かの割り振りを自分で決め、その理由を説得的に論じている」*4ことは前提でして、問題はそのあと。

 そして、LRAの基準の定義をどうするのか、学説によって違うけれど*5、木村先生の枠組みに従って、規制目的が重要であって、かつ、その目的を達成できるより制限的でない他の選びうる手段が存在しない場合でない限り正当化できない(違憲である)を用いる場合の、次の段階である「当てはめ」の問題です。もちろん、「規制目的は正当であり代替手段がないから合憲」なんていう当てはめの仕方はしてはいけないぞっ、と。


 というわけで、私の疑問は、以上のようなことが書けていることが前提の話なので、以上のことが書けてさえいれば、「当てはめ」で【代替手段がある・なし】を書いて結論を書いていれば合格答案であり、それ以上のことは、紙幅・時間の兼ねあいもあり、要求されないかもしれないのかもしれないので、そういう余計な物言いは不要なのかもしれないわけで…。



3.私の疑問のくりかえし

 さて、私の疑問というのは、



 代替手段の有無を判断にするにあたっての「解説」として、「所有権・管理権の侵害に対しては、刑事処罰ではなく民事手続で足りる、という筋の議論はしばしば出てくる」と言い切っていいのか?

 また、答案の書き方として、「刑事処罰ではなく民事手続で足りるから代替手段があり違憲」、「管理者の側に負担を課すのは酷であるから代替手段がなく合憲」と軽く書けば問題ないのかな?(被告人・検察官・裁判官それぞれの主張を併記する)という出題形式であるから、【実際の勝訴の見込み】*6は脇において、筋さえ通っていれば良いのかな?



 というような疑問があったわけで、詳細については、2つ前の日記を参照ということで。



4.暫定的な調査結果など

 といっても、まともに文献調査をしたわけではありません…。(´・ω・`)



 まず、刑事訴訟・民事訴訟の本質なんていう大上段な議論を調べようにも…。イメージとしては、刑事法上の違法行為の抑止・犯罪者に対する制裁、民亊法上の違法行為の抑止・被害者の損害の填補。両制度を憲法上違う制度というのか同じ制度というのか、それに関連してどこに着目するかによって結論が変わるような気がします。




 次に、所有権・管理権の侵害に対して、「刑法の謙抑性が、代替手段の認定に直結するのか」どうかに関する文献は探しきれませんでした*7。(´・ω・`)



 名誉毀損における民亊・刑事訴訟について。8月8日*8に改めて読んだのですが、佐伯仁志・道垣内弘人『刑法と民法の対話』(有斐閣、2001年)第14回。

 不法行為法による損害賠償制度の主目的は損害填補だけれど、制裁的・抑止的機能も有している。日本の場合、裁判所による損害額の認定が低額らしく、アメリカのような懲罰的損害賠償の制度もないとなると、数が少ないにせよ、名誉毀損罪がある程度重要な役割を果たしている(286−288頁・道垣内発言参照)。

 だとすると、民事訴訟は代替手段とは言えない鴨しれない…。*9



 最後に、繰り返しになりますが、木村先生による「あてはめ」の可視化の意義に関する感想を。

 例えば、棟居快行先生は、『刑法解釈演習』で「おおげさに言えば、学説を含む規範命題は具体的な事実への当てはめの局面においてしか、そもそも意味を有さない。……事例への適用を度外視した憲法学説は、少なくとも解釈学説ではない。」*10とおっしゃられましたが、実際にLRAの基準を使った解説がなかったような…。

 他の本でも、LRAの基準を採用するところまでは説明する、その基準を適用した結果違憲であるといった結論を書かれるのだけれど、「あてはめ」として、民亊手続でいけるから……といった説明はなかったような気がします。

 そりゃ、猿払事件最高裁判決に反対する立場からすれば、懲戒処分という代替手段があるのだから、刑事罰は×という考えになりそうですけれど*11

 もちろん、以上の感想は、私の不勉強・調査不足による勘違いからくるものであって、誤解しれませんが。ただ、そのような前提の下での感想ですが、木村先生の【明言】は、価値のあるものだと思うし、このような声援を受けたことで、今後LRAの基準に関する論文も書かれて……、その結果、全面戦争を期待しております……アトズサソ*12

*1:探し方が悪い、読んでいない、読んでいても読み方が悪い、読んでいても忘れているかもしれない、などによる悪循環…。(´・ω・`)

*2:例えば、ネットでは有力な押しつけ憲法論からどこまで具体的な答案が書けるかは知らないけれど、本問は意味がないと勝手に想像して、数行しか書かないとか(笑)。このようなことを書くと、「押しつけ憲法論が試験に不利に扱われている」と怒られるかもしれないけれど、そういう懸念・批判を私にされても困るけれど…。とりあえず、試験に役立つ『新しい憲法教科書』を作ればいいと思う…(え。参照(?):http://twitter.com/tamai1961/status/21716189896

*3:参照、http://twitter.com/siganaikenpou/status/99014558848524288

*4:宍戸常寿『憲法 解釈論の応用と展開 (法セミ LAW CLASS シリーズ )』(日本評論社、2011年)133頁

*5:最新の論考の一つとして、君塚正臣「LRAの基準」横浜国際経済法学19巻3号(2011年3月)http://hdl.handle.net/10131/7457。って書いても、「平均的な受験生」は読む余裕があるのだろうか?(´・ω・`)

*6:実際の訴訟においても、最高裁判例に真っ向から矛盾・衝突するような主張もあるわけで…。それを「運動論」と揶揄したり、「馬鹿呼ばわり」する人もいるんだが…トオイメ。

*7:刑法の謙抑性の一般的意義は理解しているということにしておいてください…汗。安易にCiNiiで検索して、新たに読んだのですが、例えば、城下裕二「謙抑主義(謙抑性の原則)」法学セミナー558号(2001年6月)とか…。

*8:http://twitter.com/siganaikenpou/status/100486140058013696

*9:このような発想だと、例えば、住居侵入事案で、不法行為法が機能しているかどうかという検証が必要になるの鴨。民亊法が機能していないとすると刑事罰の正当化ができそう。そもそも、他の手段が検討されて刑事罰が採用されているのか?

*10:棟居快行『憲法解釈演習(人権・統治機構)【第2版】』(信山社、2009年)初版はしがき http://twitter.com/siganaikenpou/status/100430372705284097で引用済み。

*11:しかし、ピアノ伴奏事件については、テープ伴奏が代替手段だと考えるのが一般的なんですね。公務員法関係とはいえ、代替手段として何を想定するかは、その目的を達成するためということから考えるようです。LRAの基準の上記定義からすれば当たり前のことなのかもしれないけれど…。ただ、テープ伴奏と比較した場合、所有権・管理権の侵害については、刑法の謙抑性から民事訴訟を代替手段として想定するわけですよね。何かの目的を達成するタメに…。両者について違いがあるのかどうか、私はよくわかっていないわけでつね…。(´・ω・`)

*12:二重処罰の禁止に当たらないにせよ、刑法の謙抑性、LRAや比例原則を使って、違憲と解することができるものがあるの鴨…(って刑法学と全面戦争なんですがwww)。モウソウパンダ。参照:http://twitter.com/siganaikenpou/status/100478015506628608