完成度の低い教科書の一例

 どうも、1年半以上ご無沙汰してしまいますた。タグとか完全に忘れてしまいました。(´・ω・`)

 先日、大学に行ったセンパイから「授業で憲法を教わったのだけれど、そこで使った教科書が完成度が低いと先生が怒っていた」ということを聞いた*1ので、その教科書を入手して、ちょっと書いてみるテスト

 ただ、最近かなり忙しくて、あまり時間がとれないので、以前途中まで読んだときにメモしたものを手がかりに*2、再度読み直すことなどせず、箇条書き程度に書いてみます。

 もっとも、この程度のことは、既に同業者の方から指摘を受けているかもしれませんが、そういう場合、今後の付き合いの関係で、「けなす」ことはないだろうから、率直に書こうと思います*3





○1−2頁:「実質的意味の憲法」=「固有の意味の憲法」のように読める。

○9頁:「政府の主張と自由民権運動側のそれとの妥協の産物…」は、「主張と主張の妥協の産物」というのか疑問。さらに、明治憲法がそれに該当するとするが、はたしてそうなのか?(誰がどのように妥協したといえるのか?)

○10−11頁:条数を明記すべき。

○11頁:信教の自由のところ、「法律の留保」がなかったという条文に即した説明がない*4

○11頁:民事・刑事・行政事件の説明がない。

○11頁:(実質的な)違憲立法審査権があり、かつ行政事件に関する司法権があれば、司法裁判所の本来の機能は十分に発揮されているといえたのか?(前者については、それがなくとも国民の権利保護が可能とも言えるし、後者については、行政裁判が司法権に属さないのが当たり前なら、トートロジーにすぎないのでは?)

○11頁:内閣が憲法上の機関ではなかったことの説明がない。

○18頁:9条の精神がパナマ憲法や太平洋諸国の比較憲法に脈々と受け継がれているって、要するに(見方を変えると)、武力介入を受けたり、他国の庇護を受けるということなのか?

○21頁:「主権」の定義の先取り。(宮沢説を紹介しなくていいのか?)

○23頁:混沌とした状況の主たる理由が、折衷的理解・融合説の性格・思考にあるのか?*5

○23頁:「判例も根強い(辻村)」?

○23頁:「凍結」の意味(帰結)を書かないと、(教科書しか読まない人には)意味がわからない。

○24頁:「国民」の定義は、法律で定まるのではないのか?

○25頁:「このように考えると」「そうすると」とこれらの前後関係が不明確。

○28頁:プープル主権を基礎においても、現行憲法上、国会議員の罷免は認められないの?

○29頁:自由委任の成り立ちを書く必要があるのでは?*6

○29頁:「半代表制」と「社会学的代表」を区別しなくていいのか?

○30頁:袴田事件、「原則として」が抜けている。225頁も審査権が及ばない場合しか書かれていない。これだと、日本新党事件最高裁判決との違いを説明したことにならない。

○34−35頁:衆議院の解散権など、問題の所在を明らかにしていない。

○37頁:平和的生存権の「個人の人権としての保障」とは? 6頁では有力説に立つのか?(通説に立っても「個人の人権としての保障」がされているということ?)

○39頁:国連憲章は「第二次世界大戦の後に策定された」の?

○41頁:どうして、「(3)遂行不能説」として自説を紹介しないのか?

○41頁:「法解釈論として」「憲法解釈論としては」は言いすぎ。

○42頁:政府解釈は、解釈の枠を超えた議論というのも言いすぎ。

○43頁:警察予備隊が保安隊と警備隊に改組されたということは、海上警備隊のことを考えると止めたほうがいいと改めて思う*7

○47頁:「イラク戦争後の活動」とは具体的に何か? 結局「自衛権」とは何か? 集団的自衛権の行使といえなくても、「国際貢献」で正当化できないのか?

○48頁:なぜ国際法違反なのか?

○49頁:「防衛の用に供する物」を常識で解釈できるのか?

○56頁:本当に、日本国憲法において外国人に認められない「人権」があると説明するのは論理的に困難?

○61頁:「人権の保障を弱める機能」とは何か?(芦部教科書でももう少し丁寧に説明がある。)

○61頁:津地鎮祭事件の紹介が少ない。説明不足。

○62頁:国籍法事件の紹介が不親切。(判決は何と何を比べて違憲だと言ったのか、読み取れない。)

○62頁:「パターナリズム」の定義がない。

○71頁:旧監獄法の改正は2段階。

○77頁:平成15年判決、電話番号が抜けている。

○78頁:「国家同視説」は、77頁の芦部説のことか?

○84頁:相続分差別は「最大決」

○84頁:国籍法事件の「非嫡出子」の定義が問題。

○90頁:三菱樹脂事件に、「私人間効力の問題」の指摘がない(南九州税理士会事件との比較)。

○91頁:「反憲法的思想であっても、内心にとどまる限り絶対的に保障する」と、この段階で初めて「絶対的に保障する」が登場するが、一般の思想・良心の場合、絶対的に保障されるのはどの範囲か? 思想形成・保持の自由のみ?

○95頁:目的・効果基準の定義がない。

○99頁:規制類型が少なすぎる(紙幅の関係で仕方がない?)。

○100頁:「上記判決以降、性表現への規制は大きく変化しており」の一文が???

○100頁:インターネットにおけるわいせつ画像の展示に対する規制手法の早急な検討?

○121頁:「国連人権委員会」?

○126頁:行政手続法の「制定年」は1994年?

○128頁:起訴前国選弁護制度は、一応2006年施行なんだけれど…。

○149頁:「国民健康保健法」?

○184頁:「阻止条項」を書くなら、日本のことを紹介すれば?

○189頁:「将来に向かって」は、条文上明らかではない。

○212頁:「権限」の条数明記。

○213頁:裁判所の定足数を書くなら、国会の定足数が重要では?

○213頁:「反対意見」は、多数意見と「結論・理由付けともに」異なるの?

○214頁:特例判事補が「高裁」のところだけに書かれている。

○214−215頁:司法権(または特別裁判所の禁止)の例外は?

○215頁:独占禁止法80条「1項」。

○217頁:規則制定権の3つの事項? 4つのほうがいいのでは?

○222頁:「訴えの利益」の定義がほしい。

○222頁:ちなみに、国家試験の合否判定は、具体的争訟性も欠けるとするのが、芦部教科書だが・・・。

○224頁:自律権に内閣を入れていいのか? 苫米地事件は自律権の問題にはならないのか?

○224頁:警察法改正事件において、最高裁は「よほどの手続違反」の存否を判断している?

○249頁:「参事会」の定義なし。

○252頁:「核心部分ついて」

○259頁:「第11章?参照」???

*1:今年度は別の定評ある教科書を使うそうな。

*2:数ヶ月前のメモを今読んで意味がわからないのは、デフォルト…。(´・ω・`)

*3:http://twitter.com/kfpause/status/317971649838317569からも想像できるように、こんなふうに「悪口」「否定的評価」を繰り返していると、「知り合い」が減るなど、まずいかもしれませんが。

*4:多くの他の箇所でも言えるけれど、「要約・文字数削減の難しさ」。「定評ある」教科書の表現と比較してみよう。

*5:うわ、某女史批判だ。

*6:他の箇所にもあるのだけれど、別の箇所で書いているのなら、そこを明示すべき。あと、重複部分が多い。おそらく執筆者間の調整がうまくいっていない。

*7:芦部教科書も同様である。http://twitter.com/siganaikenpou/status/264726664473346048