最2小判平成21年10月30日をたんたんと…(その2)

 お待たせ(?)しますた。(´・ω・`)

 今回から次回にかけて、僭越ながら、「判決文」読解講座(入門編?)とさせていただきます。m(_ _)m




2.最高裁判決の紹介・その1

A.「裁判要旨」

 さて、いきなり【邪道】なのですが、“裁判要旨”を引用します。

 1 分譲マンションの各住戸のドアポストに政党の活動報告等を記載したビラ等を投かんする目的で,同マンションの玄関ホールの奥にあるドアを開けて7階から3階までの廊下等に,同マンションの管理組合の意思に反して立ち入った行為について,刑法130条前段の罪が成立するとされた事例
 2 上記の立入り行為をもって刑法130条前段の罪に問うことは,憲法21条1項に違反しないとされた事例

 はい。要旨として、2点あるわけです。

 「報道だけ」、または、「さらに要旨を読む」だけで、感想を述べられる方もおられるでしょう…。

 例えば、【これでは、「ドアポスト」だけではなく、「集合ポスト」にも投函できなくなる。これは表現の自由の侵害だ!!】とお怒りの方もおられるだろうし、

 それとは逆に、【最高裁判決のおかげで、「集合ポストにも不快なビラが投函されることはなくなるだろう」】と喜ばれている方もおられるかもしれません。

 はたして、判決文を「正確に」理解した上での感想なのか?(´・ω・`)



 というわけで、原文に当たらないといけなくなります…(^^;。

 まあ、PDF文書で、たった5ページのチョー短い文章ですから、すぐに読めますよね♪

 しかし、問題は、【どのように読むのか? 読み取れることができるのか?】が問題なのです、たぶん…。(´・ω・`)



B.「下線部」

 さて、判決文の理由は、「第1」と「第2」の2つ。そして、前者は、さらに「1」〜「3」に分割されています。

 そして、判決文には、その部分だけは読んでもらいたいためなのか、親切にも、下線が引かれている部分があります。今回は2箇所。そこだけを読まれる方もおられるかもしれません。

 2 以上の事実関係によれば,……。

 3 (2)……本件立入り行為をもって刑法130条前段の罪に問うことは,憲法21条1項に違反するものではない。……

 という部分です。

 前者の「2」の段落はすべて下線が引かれていますねっ☆

 さて、これらの「下線部だけ」を読むだけで果たして理解したことになるのでしょうか?

 というのは、前者には、「以上の事実関係」を前提としてるわけであって、【それ以外の事実関係】には当てはまらないかもしれないからです。また、後者についても「本件立入り行為」を理由に処罰しても憲法21条1項違反ではないにしても、「他の立入り行為」に対する処罰であれば、憲法21条1項違反になるかもしれないからです。



 というわけで、当該事案の「事実関係」「立入り行為」がどういうものであったのかを確認しないといけないわけですね♪



 さて、前回も申しましたように、「電波」認定された私ですので、「電波」的な感情で紹介するおそれはありますが、一応感情を殺して、項目ごと、たんたんとまとめてみます……(^^;。

 ……と思ったけれど、まとめるのに手間がかかるし、長くなる罠…。(´・ω・`)



C.本題の判決文・その1

 まずは、「1」の事実関係の部分と、「2」の部分*1と言われそうなところ。をまとめることにしましょう…。

高裁判決*2よりも簡潔に述べられているのを、更にまとめるわけですが、重要な要素の見落としがあるかもしれません…。それにしても長いですね…orz。要約する能力なし…。(´・ω・`)

 一応、項目だては判決文に従いつつも、「(a)(b)…」及び〔〕のコメントはしが研によります。m(_ _)m

1 本件の事実関係
(1)本件マンションの構造等
  ア 地上7階・地下1階建ての分譲マンションで、1階の店舗・事務所部分の出入り口と2階以上の住宅部分への出口は完全に区分されている。
  イ 2階以上の住宅部分への出入り口として、「玄関出入口」(ガラス製両開きのドア)と「西側敷地内出入口」(鉄製両開き門扉)がある。
   「玄関出入口」からマンションに入ると、「玄関ホール」、その奥に「玄関内ドア」(ガラス製両開きのドア、オートロックなし)がある。
   「玄関内ドア」を開けて「1階廊下」を進むと「エレベーター」、その横に「東側敷地内出入口」(鉄製片開きドア)がある。
   その「東側敷地内出入口」を出ると、すぐのところに2階以上に続く外階段〔2つあるのうちの1つ〕がある。
(2)玄関出入口及び玄関ホール内の状況
 ア 「玄関出入口」付近の壁面に警察官立寄所のプレート、「玄関出入口」のドアに「防犯カメラ設置録画中」のステッカーがちょう付されている。
 イ 「玄関ホール」には「管理人室の窓口」、その反対側の掲示板に、管理人組合名義の「2つの張り紙」*3がちょう付されている。
   この「2つの張り紙」の位置は、ビラ配布目的で玄関ホールに立ち入ったものにはよく目立つ位置である。
 ウ 管理室の窓口からは、玄関ホールを通行する者を監視することができる。
   管理組合から管理業務の委託を受けた会社が派遣した管理員は、24時間体制常駐ではなく、不在の曜日・時間帯がある。
(3)本件マンションの管理組合規約に基づいて、組合の理事会が、「チラシ等の配布のための立入りの原則禁止」*4の決定を行なっていた。
(4)被告人の行為
  本件ビラを本件マンションの各住戸に配布するため、「玄関出入口」を開けて、「玄関ホール」に入り、
  さらに「玄関内ドア」を開けて、1階廊下を経て、「エレベーター」に乗って7階に上がり、各住戸のドアポストに、本件ビラを投函しながら7階から3階までの廊下と外階段を通って3階に至ったところ、住人に声をかけられて本件ビラの投函を中止した(「本件立入り行為」)。
  当時、被告人は、上記1(2)イの「玄関出入口」及び「玄関ホール内」の状況を認識していた。

2 以上の事実関係によれば、
  (a)本件マンションの構造及び管理状況  〔← 特に1の(1)、(2)ア・ウ、(3) ?〕
  (b)玄関ホール内の状況  〔← 1の(2)イのみ?〕
  (c)上記はり紙の記載内容  〔← 1の(2)イのみ?〕
  (d)本件立入りの目的  〔← 1の(4)〕
 などからみて,
  (e)本件立入り行為が本件管理組合の意思に反するものであることは明らかであり, 〔← 立入り行為が管理権の侵害。〕
  (f)被告人もこれを認識していたものと認められる。  〔← 故意がある。〕〔← 1の(4)〕

  (g)そして,本件マンションは分譲マンションであり,本件立入り行為の態様は玄関内東側ドアを開けて7階から3階までの本件マンションの廊下等に立ち入ったというものであることなどに照らすと,
  (h)法益侵害の程度が極めて軽微なものであったということはできず,他に犯罪の成立を阻却すべき事情は認められないから, 〔← 犯罪成立の阻却事由なし〕
  (i)「本件立入り行為」について刑法130条前段の罪が成立するというべきである。 〔← 有罪〕

 素直に読むと(?)、【詳細に事実関係を認定した上で】有罪判決を下しているように読めるような気がしませんか?

 この事実関係以外の場合には、有罪にならない場合があるのではないでしょうか?

 さて、この最高裁判決にも、次の文章(本事件の控訴審判決の評釈)が当てはまるかもしれません*5

 本判決〔この事件の控訴審判決〕は、政治ビラを配布する目的であっても住居侵入罪が成立することを認めた者であるが、……本件マンションの構造、管理・使用状況、侵入の目的、態様、配布されるビラの内容、滞在時間等を詳細に検討して結論を導いているのであり、政治ビラを配布する目的で集合住宅に立ち入る行為一般を住居侵入罪として処罰できると判断したものではないことには留意する必要があると思われる。

 上の文章の「集合住宅全般ではない」のは、表現の自由の重要性から、当たり前のこと?

 上の文章とは逆に、本判決は、管理権・居住権を重視して「ドアポストのみならず集合ポストまでの規制」を認めたもの?

 それぞれの立場から、「本判決は満足?不満足?」



 素直に読むと(?)ですが…、

 例えば、同じような「構造、管理・使用状況」のマンションに、同じような政治ビラの内容を、同じように「ドアポスト」に投函すれば、「住居侵入罪」で有罪になる可能性が高いでしょう。

 で、例えば、同じような「構造、管理・使用状況」のマンションに、同じような政治ビラの内容を、「集合ポスト」に投函したらどうなるのでしょう?

 (g)(h)をまず再度読んで、その前に書かれている被告人の行為を再確認した結果、「有罪になる」と思う人もいれば、「有罪にはならない」と思う人もいること自体は避けられないと思います…。

 しかし、今日の日記の最初の、

 【「報道だけ」、または、「さらに要旨を読む」だけで、感想を述べられる方】は、ちょっとは考えが変わったかもしれませんね♪



 というわけで、今日は、ここまで。

 次回は、蛇足的に、「3」の部分を。

 いや、本エントリーの主目的は達成したつもりです…(^^;。(自己満足)



                              (Dameken will be back soon.)*6

*1:昨年度の重版であれば、「刑法上の論点については刑法……〔の評釈〕に委ねる」と言われそうなところ。『平成20年度重要判例解説 (ジュリスト臨時増刊)』(有斐閣、2009年4月)20ページ〔橋本基弘執筆〕

*2:東京高判平成19年12月11日、判例タイムズ1271号331ページなど。

*3:「チラシ・パンフレット等広告の投函は固く禁じます。」と黒色の文字で記載されたA4判大の白地のはり紙と,B4判大の黄色地の紙に「当マンションの敷地内に立ち入り,パンフレットの投函,物品販売などを行うことは厳禁です。工事施行,集金などのために訪問先が特定している業者の方は,必ず管理人室で『入退館記録簿』に記帳の上,入館(退館)願います。」と黒色の文字で記載されたはり紙

*4:「チラシ,ビラ,パンフレット類の配布のための立入りに関し,葛飾区の公報に限って集合ポストへの投かんを認める一方,その余については集合ポストへの投かんを含めて禁止する旨」

*5:関口新太郎・法律のひろば2008年5月号66ページ

*6:スマソ…