最2小判平成21年10月30日をたんたんと…(その1)

 比較的長くなりそうなので、できたところまでうp。

 ものすごく初歩的なところから…。(´・ω・`)





0.まえがき

 1ヶ月ほど前、某所にて、この事例に関して、議論したのですが、「電波」認定されてしまいますた…。(´・ω・`)

 それはさておき、今回取り上げる最高裁判決が出た後も、報道などを見ていても、結局は、「これは常識的な判決だ。」「これは非常識な判決だ。」という「常識論」であるとか、

 その理由づけについても、「自分自身の常識にあっている」かどうか、または「管理権」「表現の自由」という「印籠」で決まってしまうような物言いのような気がしたので*1

 「電波」な私が、この判決を、感情を押し殺して淡々と「説明」をしようかと思いました…(^^;*2。(前書きがまた長い…。)



1.まずは条文

 刑法130条前段は、「正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。」と規定しています*3
 この条文の構造がわかりますか?

 今年の5月4日の日記でも紹介した「選択的接続が三段階以上になる場合」なのです*4*5

 2つの「若しくは」は、並列関係にはありません。

 括弧で括ると、

【[正当な理由がないのに{人の住居 or 人の看守する(邸宅 or 建造物 or 艦船)}に侵入し]or 要求を受けた……退去しなかっ】た者は、【三年以下の懲役or 十万円以下の罰金】に処する。 

 そして、「人の住居」にあたる場合には、「正当な理由がない」「侵入」という2つの要件を充たせば、処罰の対象になる。

 それに対して、「邸宅・建造物・艦船」にあたる場合は、さらに、「人の看守する」という要件を充たさないと、処罰の対象にならないわけです。



 さて、今回の事例は、報道にある通り、結論的には、前者の問題とされたわけですね。

 だから、今回のエントリーは「住居」の問題に限定するわけですが、まず、条文から明らかなように、3つの要件(「人の住居」「正当な理由がない」「侵入」)を充たさないと、処罰されないわけです。

 とすると、「被害者」から見ると、例えば、「『侵入された』のにどうして処罰されないの?」とか「3つの要件充たしているはずなのに、どうして処罰されないの?」と思われて、その結果「刑法で保護されていない」と思われるかもしれません。

 そこで、「住居」「正当な理由」「侵入」が何かが問題になるわけで、それをめぐって、刑法学上激しい争いがあるわけですが、まあ、そのへんは先送りして*6、次回から、最高裁判決を読んでみませう。。。

*1:もちろん、その中にも、いろいろと勉強されている方がいらっしゃるでしょうが、簡潔に、しかも段階を踏まずに書かれていると、その読者がどのように読みとるかという点で、問題があるかなと思ったわけです…(^^;。

*2:「オレは忙しいから、オマエが説明汁。オマエでもできるだろ。」という「空気」を感じたってこともあるんですが…。

*3:ちなみに、同条後段部分を消し線を施しましたが、これは、いわゆる不退去罪を規定します。この前段と後段の関係が、これまた論点になるのですが、当然のことながら、今回は省略しまつ。

*4:ははは、普段条文を読んでいないと、こんなみぢかなところにあるなんて気がつかない罠…。(´・ω・`)

*5:そういえば、今年の5月4日の日記には、検索して来られる方が多いのですが、衆議院法制局法制執務研究会「『及び』『並びに』『かつ』」法学教室344号(2009年3月)6−8ページ、同「『又は』『若しくは』」法学教室345号(2009年4月)4−6ページも参考になりますよ。というか、(アクセスが容易な方はですが)そちらをお勧めします♪ もっと早くに言っておけばよかったのですね…。(´・ω・`)

*6:「住居」と「邸宅」の関係とか、そういうものも問題になるのですが、そのへんも省略します。