上尾市福祉会館事件の「副作用」

 例のごとく変わり映えのしないエントリーを…(^^;。

 みくCでは、14日に書きました。そのほぼ転載です。




 書く手間を省くために、

 http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?action_id=dspDetail&hanreiSrchKbn=02&hanreiNo=25575&hanreiKbn=01

 から、「判示事項」をコピペ。

 何者かに殺害された労働組合幹部の合同葬に使用するためにされた市福祉会館の使用許可申請に対する不許可処分が違法とされた事例

 さらに、「裁判要旨」も一部引用。

 「会館の管理上支障があると認められるとき」に当たるとしてされた不許可処分は、右殺害事件についていわゆる内ゲバ事件ではないかとみて捜査が進められている旨の新聞報道があったとしても、右合同葬の際にまでその主催者と対立する者らの妨害による混乱が生ずるおそれがあるとは考え難い状況にあった上、警察の警備等によってもなお混乱を防止することができない特別な事情があったとはいえず、右会館の施設の物的構造等に照らせば、右会館を合同葬に使用することがその設置目的やその確立した運営方針に反するとはいえないなど判示の事情の下においては、「会館の管理上支障がある」との事態が生ずることが客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測されたものということはできず、違法というべきである。




 ここから、「○○であることは明らかだ」と安易なことを言ってもいいのだけれど、タイトルの話をすることにします。

 しかし、それでは意味がわからないだろうから、前提知識の説明をば…。



 葬儀をすることが憲法22条1項が保障する「集会の自由」にあたるかどうかはさておき、地方自治法244条2項によれば、

 普通地方公共団体(……)は、正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。

 つまり、地方自治法244条2項によると、地方自治体は、「正当な理由がない限り、住民が公の施設を利用することを拒んではならない。」 わけです(当たり前か…)。



 それを受けて、上尾市も、条例で、拒むことができる「正当な理由」として、「会館の管理上支障があると認められるとき」と規定した。

 そして「主催者と対立する者らの妨害による混乱が生ずるおそれがある」からとか言って、拒んだわけだ。

 「それでいいぢゃまいか」と思う方もおられよう。



 しかし、最高裁は、「裁判要旨」から明らかなように

 本件は「主催者と対立する者らの妨害による混乱が生ずるおそれがある」という事態は考えがたい状況だ
 警察の警備等によってもなお混乱を防止することができない特別な事情があったとはいえない、
 右会館の施設の物的構造等に照らせば、右会館を合同葬に使用することがその設置目的やその確立した運営方針に反するとはいえないなど判示の事情の下においては、「会館の管理上支障がある」との事態が生ずることが客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測されたものということはできない、
 として、不許可処分が違法であるとした。

 まあ、そこを細かく説明してもいいし、「それでいいぢゃまいか」と思う人を前回までのようにあげつらう(?)こともできるが、今日は別の話。



 朝日新聞のデータベースで見ていたところ、

 「暴力団関係者の火葬が行われた際に、火葬場を運営する自治体側が、同じ時間帯やその前後に火葬の予約を入れようとした市民に日時や施設の変更を求めるケースが起きている」らしい。*1

 自治体は、住民の安全を優先するため、警察の指示に従ったし、遺族から苦情もなかった、とのこと。

 実際には、断られた遺族は、別の火葬場で火葬を行えた。



 「裁判したら、どうなるだろうかな?」という問題もあるけれど、

 暴力団関係者の火葬を拒めない(拒んだら裁判で敗訴するだろう)から、他の住民の火葬を拒む方向になったという事例であることは確かだ。



 本当に「拒んだら裁判で敗訴する」のか?

 また、法律や条例で定めれば敗訴しなくなるのではないのか?

 そもそも最高裁判決が、(どっちに振れるにせよ)「おかしいのではないか?」なんて難しい話はせずに、上の指摘にとどめておきます(ほんと、大したエントリーではないよね…。)。

*1:“組幹部火葬、市民に余波 日時・施設の変更、「安全期し」要請 【西部】”(2009年06月08日 朝刊 1社会 027)という記事から引用した。