条数の記載

 「条数の記載」については、こちらのブログでは、

 http://d.hatena.ne.jp/shiga_kenken/searchdiary?word=%be%f2%bf%f4

 という形で、「不満」を述べてきていたようです(過去の事はすぐに忘れている…)。
 そういうわけで、今日は、さきほどミクシで書いた話をこちらにも…(若干加筆)。




 私は、「正確性の担保・読者の便宜のために、せめて条数を載せればいいのにね。」 と思っています。

 法学の教科書に限らず、行政文書・新聞などでも。

 そういうわけで、かつて何度かこちらで書いたわけです。

 今日は、「できたてホヤホヤ(?)」の制度である、強化された検察審査会に関する新聞記事を「検証」したいと思います。

 まあ、要するに、「新聞記事から法律学の素材を探す」一環として、「条数の記載」の話をしようと思ったわけです…(^^;。



 取り上げる記事は、何でもいいし*1検察審査会の権限強化については複数の記事がありますが、5月20日付読売新聞

 http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20090520-OYT1T00152.htm

 の次の部分を例にしたいと思います。

 …起訴相当の議決があった事件では、検察が再度不起訴にした場合には審査会がもう一度審査。再び起訴相当と議決されれば、裁判所が指定した弁護士が容疑者を起訴し、公判で立証活動をする。

 まあ、新聞にこのように書いてあるし、政府もそういうふうに言っているんだから*2、こういうことを知っているのであれば、問題ないといえば問題ないのだろう。私の長文を読んで、条文調べたくないと思われる方もおられるかもしれない。

 しかし、「条数の記載」をしないことは、「正確性の担保・読者の便宜のために」という点で、問題ないのだろうか?



 「正確性の担保」に関して言うと、

 記者さんは、ちゃんと条文引いているんだろうか?

 どこかからの「コピペ」なんだろうか?

 などと、(組織の中を知らないがゆえに)疑問に思ったりする。



 というわけで、上に引用した記事は、2つの文なので、まずは、最初の文を参考に条文を探してみよう。条数の記載がないから、「一から」探さないといけないわけです…><;。




 ところで、検察審査会について規定している「検察審査会法」は、報道にあるとおり(?)、昨日「施行」されている。

 しかし、総務省「法令データ提供システム」は、本日現在、今年4月1日現在の情報であり、当該法律の未施行部分をクリックするなどして、「改め文」を読み解かないといけない。

 「法庫」も4月1日現在の情報。




 携帯用六法だと、たとえば、ネットで収録法令を確認したところ、有斐閣の『ポケット六法』には収録されていない。

 三省堂の『デイリー六法』や『新六法』には収録されている(ただし、改正法かどうかまでは未確認。)。

 岩波書店のものは、ネットには出ていないようだ…。



 さて、話を戻して、引用した記事の前半部分を分解。

 (a)起訴相当の議決があった事件では、
 (b)検察が再度不起訴にした場合には
 (c)審査会がもう一度審査。

 で、条文を探すと・・・、

41条の2第1項本文:
 第三十九条の五第一項第一号の議決をした検察審査会は、検察官から前条第三項の規定による公訴を提起しない処分をした旨の通知を受けたときは、当該処分の当否の審査を行わなければならない。

 これも分解したほうがいいのでしょうが(笑)、

 「第三十九条の五第一項第一号の議決をした検察審査会は」、

 39条の5第1項も見ないといけませんが、そこを読んで、意味充填しますと、

 「検察官が不起訴処分にし、それに対して検察審査会が起訴相当の議決をした場合」みたいになりますので、(a)の部分。



 「検察官から前条第三項の規定による公訴を提起しない処分をした旨の通知を受けたときは」、

 前条(39条の4)の3項も見ないといけませんが、そこを読んで、意味充填しますと、

 「2度目の不起訴処分をしたおという通知を受けた場合」みたいになりますので、(b)の部分。



 「当該処分の当否の審査を行わなければならない。」の部分は、(c)の部分。



 というわけで、

 条数をつけるのであれば、

 (少なくとも)文末に、(少なくとも)「(検察審査会法41条の2第1項)」と書かないといけないのかなと…。

 つまり、「起訴相当の議決があった事件では、検察が再度不起訴にした場合には審査会がもう一度審査(検察審査会法41条の2第1項)。」というように。



 次に、同じようにして、記事の後半部分を分解。

 (d)再び起訴相当と議決されれば、
 (e)裁判所が指定した弁護士が
 (f)容疑者を起訴し、公判で立証活動をする。

 便宜的に最後から条文を探していくと、

41条の9第3項:
 指定弁護士(第一項の指定を受けた弁護士……をいう。以下同じ。)は、起訴議決に係る事件について、次条の規定により公訴を提起し、及びその公訴の維持をするため、検察官の職務を行う。

 この部分が、(f)の元になっているのかな。「第一項の指定を受けた弁護士」がヒントになっているわけだけれど、

41条の9第1項:
 第四十一条の七第三項の規定による議決書の謄本の送付があつたときは、裁判所は、起訴議決に係る事件について公訴の提起及びその維持に当たる者を弁護士の中から指定しなければならない。

 から、(e)は、49条1項が元になっているわけだ。

 41条の7第3項の話は、省略して、(d)の部分はというと、

41条の6第1項:
 検察審査会は、第四十一条の二の規定による審査を行つた場合において、起訴を相当と認めるときは、第三十九条の五第一項第一号の規定にかかわらず、起訴をすべき旨の議決(以下「起訴議決」という。)をするものとする。起訴議決をするには、第二十七条の規定にかかわらず、検察審査員八人以上の多数によらなければならない。

 この条文(の「前段」)は、要するに、

 41条の2の規定による審査(すなわち2度目の不起訴処分がなされた場合の2度目の審査)において、2度目の起訴相当の議決ということになる。

 ということをいっているので、(d)の部分の元になっている…。



 ということは、「条数の記載」をするのであれば、少なくとも文末に、少なくとも3つの条項を記載しないといけないのかな?



 ふーむ。他人が書いた文章に、あとで条数つける、という作業はつらい…。(´・ω・`)

 しかし、まあ、読者としては、こういう作業も必要なのかもしれない…。

 先にも書きましたように、それよか、書き手がそういうことをしているのかなあというのも、疑問なわけです…(^^;。



 なお、上の新聞記事には、2001年の明石市歩道橋事故が例になっているけれど、その事故の存在自体、知らない人は知らないようで…。

 「首相?日本も大統領ぢゃないの?」なんていう人もいるくらいですから…。

*1:たとえば、先ほど指摘を受けたのですが、http://www.j-cast.com/2009/05/20041530.htmlのところの「労働安全衛生法」は、直接的には、労働安全衛生規則615条とのことです。

*2:裁判所のサイトだと、たとえば、http://www.courts.go.jp/kensin/seido/sinsakai.html