Wikipedia補完計画・その4

 7月1日の日記:“Wikipedia補完計画”から数えて、早くも(?)第4弾。

 10月5日の日記のと同様、将来的にこちらに書くであろう事案を調べた際のふくさんぶつでつ。



…事件の本質は権利能力なき社団である県隊友会と原告との私人間の争いとされ、自衛隊地連職員(国家)は関係ないと認定している。
(一文省略)。
また訴訟に参加していない山口県護国神社の宗教活動に理解を求めるが、訴外の第三者に対して何らかの対応を求めるのも異例である。

 第2段落における判決の要約の、「合祀申請しても公務員である自衛隊職員(国家)は関係ないから」という部分も引っかかりますので、私なりに要約をば。

1.合祀は神社の単独行為、合祀申請は県隊友会の単独行為で、地連はそれに協力したにすぎない(合祀と合祀申請の分離、合祀申請の共同行為性を否定。)。
2.それがゆえに、地連の行為は、政教分離のハードルを軽く越える事ができた(合祀に対して申請の協力行為の法的意味を否定、関与の間接性・宗教的意義の希薄性を強調。)。
3.そして、原則として県隊友会の合祀申請と靖国神社の合祀を一体的に評価すべきではないから、訴外の第三者(神社)との関係で法的利益の侵害の有無を判断すべきであり、寛容論を説いてその侵害を認めなかった。

 要するに、「法的に関係ない」とか、「合祀と合祀申請を分離し、合祀申請の共同性を否定し、協力関係の法的意味を否定した」とか書かれると、ワカリヤスイかなあと…。



 次に、「事件の本質は権利能力なき社団である県隊友会と原告との私人間の争いとされ」たとする点について。

 参考文献なのであろう、『憲法判例百選〈1〉 (別冊ジュリスト (No.154))』(有斐閣、2000年、第4版)100頁〔笹川紀勝・執筆〕によると、*1

 ところが、最高裁多数意見では、県隊友会が遺族の要望にそって行為したのであり、地連職員は県隊友会に協力したに過ぎず、事件の核心は県隊友会と被上告人の間での争い、つまり私人間の争いとして理解された。

 と書かれています。

 この文章の直前に原審で政教分離違反の主張が認容されたことが書かれた上で、「ところが」とつながっているので、意味が分かるのですが、Wikipediaの文章は、第2段落と第4段落と離れているので、分かりにくいかもしれないなあと…。(かなり細かい?)



 最後に、笹川論文の上の引用文の直後の指摘に注目(判決文を実際に読めば分かるけれど。)。

 しかし、補足意見の6人と反対意見の合計7人が、地連職員の行為を行き過ぎないし憲法違反と言っているのは注目される。(強調部は、しが研がおこなった。)

 訴外の第三者(神社)ではないのです…。上告人である国の職員の行為に対するものだったのです…。

*1:なお、最新版の別冊ジュリスト No.186 憲法判例百選1』(有斐閣、2007年、第5版)98-99ページは、〔赤坂正浩・執筆〕である。