『判例百選』シリーズの引用判例集

 ♪さー、ねむりなさい、つかれきった〜(´・ω・`)

 これまで、こちらに関しては、「一応」、毎日書き続けることができました。(心の中で)目標とさせていただいてきた方よりも長く書き続けてきたはずです。内容はともかくorz。

 ところで、プラッツ先生の3月28日のエントリー“『判例百選』シリーズの引用判例集”について、どなたも指摘されていないようなので、簡単にコメントさせていただきます。m(_ _)m*1



 いままで、各年の重要判例シリーズと若干の個別分野シリーズを別とすると、各法分野の『判例百選シリーズ』で解説対象となる裁判例は、最高裁判決(決定)に限られ、その出典は、原則として民集刑集のみだったように思います。そこで、通常は手元においていないのに、無理矢理、民集刑集から引用するわけです。しかし、民集刑集の本物を見たことのある法学生はどれほどいるのでしょうか。久しい前から、私の場合には、『行政判例百選』の第4版(1999年刊)の前から、『判例時報』、『判例タイムズ』の号・ページも挙げていただくようにお願いしていたのですが、今回、第5版から実現することになったようです。ゲラ(校正)刷りで確認しました。ただ、今回は、解説の中で使っていた西暦元号に直されているようです。文部科学省への最近の提出物も、外国で出版した本や論文のデータであっても、出版年を昭和や平成に直さなければ受け付けてもらえないのですが、何か、グローバル化というのとは反対の復古調を感じてしまいます。
(強調部は、プラッツ先生ご自身によるもの)

 気になったのは、判例百選シリーズの出典が、原則として民集最高裁判所民事判例集)・刑集最高裁判所刑事判例集)という正規の判例集のみだったのかどうかです*2。憲・民・刑・商・民訴・刑訴・行政法などと科目を手に広げて調べるのも疲れるし、1つの科目も全部の版を調べるのは億劫だったので、いくつかの科目の新しいもの順にちょっとだけ調べてみました(^^;。




1.行政判例百選

 まずは、行政法。確かに、別冊ジュリスト150号・151号『行政判例百選Ⅰ・Ⅱ[第四版]』(有斐閣、1999年)までは、原則、民集刑集のようです。つまり、正規の判例集が優先し、ない場合に商業誌、特に、判例時報判例タイムズが記載される。

 なお、元号のみ使用。



2.憲法判例百選

 憲法の場合は、なぜか早い時期から、正規の判例集のみではなく、商業誌が合わせて記載されています。

 それが始まったのが、別冊ジュリスト95号・96号『憲法判例百選Ⅰ・Ⅱ[第二版]』(有斐閣、1988年)。現在の最新号である、154号・155号[第四版](2000年)まで同様。二分冊になった最初の版である、68号・69号(1980年)までは、行政法と同様、正規の判例集のみが原則でした。

 なお、元号のみ使用。



 では、他の科目は?と気になってきましたので、ちょっとだけ。

3.民法判例百選

 別冊ジュリスト136・137号『民法判例百選Ⅰ・Ⅱ[第四版]』(1996年)までは、原則、正式判例集のみ。

 159・160号[第五版](2001年)以降、正式判例集のほかに、商業誌も併記されています。最新版は、その次の版の[第5版新法対応補正版](2005年)。

 なお、元号のみ使用。



4.刑法判例百選
 別冊ジュリスト142号・143号『刑法判例百選Ⅰ・Ⅱ[第四版]』(1997年)までは、原則、正式判例集のみ。

 次の版で最新版の166・167号[第五版](2003年)で、ようやく正式判例集のほか、商業誌が併記されるようになりました。

 なお、元号のみ使用。



 他にも書くべきでしょうが*3、大体の傾向はつかめますよね。憲法は、なぜか、早め(1988年)に商業誌も併記するようになった。科目によって違いますが、90年代後半から併記されることが多くなった。しかし、元号のみ使用という点では変わらない。これらの理由は、編集者・出版担当者が、ご存知かもしれませんね。



 その点で興味深いのが国際法
5.国際法判例百選
 別冊ジュリスト156号『国際法判例百選』(2001年)。正式判例集のほか、商業誌が併記されています。

 さらに、外国での判決が西暦であるとともに、日本での判決でも、元号と西暦が併記されています。


 以上のことから、(ごく一部しか探しませんでしたが)西暦のみの表示は、判例百選では見当たらない。

 ちなみに、憲法の教科書に限っても、本文は、元号のみ、西暦のみ、両方という方式がありますし、本文は一方でも、判例索引は、両方というものがあります。



 最後に、芦部信喜憲法』(岩波書店)の「新版[第二版]はしがき」(1997年)の一部を引用して、このエントリーを終わらせていただきます。m(_ _)m

 近時刊行の概説書をみると、日本の判例等で用いられる元号年に西暦年を併記したり、もっぱら西暦年を用いるものも目につくが、本書では判例については、判決原本どおり元号年のみとした。そのほうが、広く使用されている『憲法判例百選ⅠⅡ』や『憲法の基本判例』の方式と一致するので、便宜であろう。昭和については二五、平成については八八を加えると、西暦年が容易に分かるので、了承を乞いたい。 

トラックバックに失敗しました。 (500 read timeout)」が出てしまいますorz。(22:48追記)

*1:細かい点についての揚げ足取りといえば、確かにそうなのですが・・・(^^;。

*2:よって、最高裁だけなのかとか、行政判例百選がもうじき第五版が出るのかとか、文科省の提出物の話とか、復古調かどうかは今回のエントリーの主題ではありません。

*3:たとえば、別冊ジュリスト125号『地方自治判例[第二版]』(1993年)までは、原則、正式判例集のみ。次の版で最新版の168号[第三版](2003年)で商業誌も併記。