Yahoo!ニュースの記事から

 もう1ヶ月経ったんですね・・・。




1.旭川市国民健康保険料事件

 2月27日の日記の続報ということになりますか。

 国保料にも租税法律主義 「税金に類似」と初判断

 国民健康保険料の料率を市条例に明記せずに徴収するのは憲法84条の「租税法律主義」に反するとして、北海道旭川市の無職杉尾正明さん(70)が市を相手に国保料徴収の取り消しなどを求めた「旭川国保訴訟」の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・町田顕長官)は1日「強制加入、徴収の国保料は税金に似ており、租税法律主義の趣旨が及ぶ」との初判断を示した。
 その上で「旭川市の条例、徴収方法は明確で、違憲、違法はない」と判断。杉尾さんの上告を棄却した。裁判官15人全員一致の意見。原告逆転敗訴の2審札幌高裁判決が確定した。
共同通信) - 3月1日16時54分更新

 早速、最高裁のHPに判決文がアップされていました。最大判平成18年3月1日、平成12年(行ツ)62号事件、平成12年(行ヒ)第66号事件です。要旨部分のみ引用。

要旨:
 1 市町村が行う国民健康保険の保険料については憲法84条の趣旨が及ぶと解すべきであるところ,国民健康保険法81条の委任に基づき条例において賦課要件がどの程度明確 に定められるべきかは,賦課徴収の強制の度合いのほか,社会保険としての国民健康保険の目的,特質等をも総合考慮して判断する必要がある
 2 旭川市国民健康保険条例が,保険料率算定の基礎となる賦課総額の算定基準を定めた上で,市長に対し,保険料率を同基準に基づいて決定して告示の方式により公示すること を委任したことは,国民健康保険法81条に違反せず,憲法84条の趣旨にも反しない
 3 旭川市長が旭川市国民健康保険条例の規定に基づき保険料率を各年度の賦課期日後に告示したことは,憲法84条の趣旨に反しない
 4 旭川市国民健康保険条例の規定が恒常的に生活が困窮している状態にある者を保険料の減免の対象としていないことは,国民健康保険法77条の委任の範囲を超えるものでは なく,憲法25条,14条に違反しない

2.裁判官の独立

 「判決短い」判事退官へ 横浜地裁 再任希望を取り下げ

 「判決理由が短過ぎる」などの指摘を受け、最高裁の「下級裁判所裁判官指名諮問委員会」(委員長・奥田昌道元最高裁判事)から再任不適当と答申されていた横浜地裁井上薫判事(51)が今年に入り、再任希望を取り下げていたことが一日、分かった。最高裁が内閣に提出する再任名簿に登載されないため、四月の任期切れに伴って退官する。
 指名諮問委は昨年十二月、井上判事を含む四人について「再任不適当」を答申。関係者によると、このうち同判事ら三人は再任希望を撤回したという。
 井上判事は判決文について、結論につながる本論以外の部分は「蛇足」で必要ないというのが持論で、「司法のしゃべりすぎ」という本も著した。しかし、訴訟当事者からの苦情も多く、横浜地裁所長から人事上の減点評価を受け、逆に国会の裁判官訴追委員会に同所長の罷免を要求。諮問委の答申に「組織的な裁判干渉だ」と反発していた。
 一方、最高裁の裁判官会議は一日、五月一日までに任期が切れる判事、判事補計百八十四人のうち、諮問委が「不適当」とした一人について「裁判官にふさわしくない」として不再任を決めた。
産経新聞) - 3月1日15時48分更新

 結論として、今年は、諮問委員会が再任不適当と答申していた方のみが、再任名簿に登載されなかったということですね。

3.在外邦人の国政選挙区選挙

 海外での選挙区投票を解禁=公選法改正案を了承−自民調査会

 自民党選挙制度調査会(鳩山邦夫会長)は1日午前、党本部で総会を開き、海外在住邦人に国政選挙の選挙区選への投票を認める公職選挙法改正案を了承した。改正案は、「当分の間、この法律の適用については、衆議院比例代表選出)議員又は参議院比例代表選出)議員の選挙とする」とした付則を削除。併せて、選挙区の候補者情報をインターネットを活用して有権者に提供する仕組みも整備する。
 政府は今国会に改正案を提出、成立を図り、遅くとも来年夏の参院選から実施する方針だ。
時事通信) - 3月1日13時2分更新

 自民党選挙制度調査会の説明はさておき、昨年11月5日の日記で取り上げ挙げましたように、わが国では非常に稀有な事例であるところの違憲判決の紹介がありませんね。判決文は、こちらです。最大判平成17年9月14日、平成13(行ツ)82事件、平成13(行ヒ)76事件、平成13(行ツ)83事件、平成13年(行ヒ)77事件。こちらもついでに、判決の要旨部分のみ引用。

要旨:
 1 平成10年法律第47号による改正前の公職選挙法が,平成8年10月20日に実施された衆議院議員の総選挙当時,在外国民(国外に居住していて国内の市町村の区域内に住所を有していない日本国民)の投票を全く認めていなかったことは,憲法15条1項,3項,43条1項,44条ただし書に違反する
 2 公職選挙法附則8項の規定のうち,在外国民に国政選挙における選挙権の行使を認める制度の対象となる選挙を当分の間両議院の比例代表選出議員の選挙に限定する部分は,遅くとも本判決言渡し後に初めて行われる衆議院議員の総選挙又は参議院議員通常選挙の時点においては,憲法15条1項,3項,43条1項,44条ただし書に違反する
 3 在外国民である上告人らが次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院議員通常選挙における選挙区選出議員の選挙において,在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にあることの確認を求める訴えは,適法な訴えである
 4 在外国民である上告人らは,次回の衆議院議員の総選挙における小選挙区選出議員の選挙及び参議院通常選挙における選挙区選出議員の選挙において,在外選挙人名簿に登録されていることに基づいて投票をすることができる地位にある
 5 国会議員の立法行為又は立法不作為が国家賠償法1条1項の規定の適用上違法の評価を受ける場合
 6 平成8年10月20日に実施された衆議院議員の総選挙までに在外国民に国政選挙における選挙権の行使を認めるための立法措置が執られなかったことについて国家賠償請求が認容された事例

 せっかくだから、地方選挙も一緒に・・・(´・ω・`)。