「法律の留保」・その8(完)

 昨日の日記の続きです。

 本質性理論への若干の素朴な疑問*1を書くだけですので、今日の話はどうでもいいということなので、飛ばして読んでくださっても問題ないです(^^;。



本質性理論への若干の素朴な疑問

 本質性理論の内容については、8日の日記の下のほうをご覧ください*2。m(_ _)m

  • 手続法の問題

 大橋洋一行政法―現代行政過程論[第2版]』(有斐閣、2004年)32頁からの引用。

 本質性理論は、法律の規律密度に対して実質的要請を行う。つまり、①法律規定が重要な要件を政省令に委任している場合や、②法律規定は存在するが、抽象的な要件のみを定め行政のきわめて広範な自由判断を認めているような場合も、留保原則違反と評価される。①は委任立法の限界問題として従来論じられてきたものであり、②は法律要件の明確性の問題として扱われてきた。租税法学では、租税法律主義(これは法律の行政の原理に該当する)の下に、①を課税要件法定主義、②を課税要件明確主義として論じてきている。

 私も9日の日記に触れたことなのですが、せっかくですので、最高裁判例を引用。最大判昭和60年3月27日、昭和55年(行ツ)15事件、民集39巻2号247頁憲法では、平等権のところで勉強するのかな?、有名なサラリーマン税金訴訟(大島訴訟)の平等権のところでは、紹介されないであろう部分。

 租税は、国家が、その課税権に基づき、特別の給付に対する反対給付としてでなく、その経費に充てるための資金を調達する目的をもつて、一定の要件に該当するすべての者に課する金銭給付であるが、およそ民主主義国家にあつては、国家の維持及び活動に必要な経費は、主権者たる国民が共同の費用として代表者を通じて定めるところにより自ら負担すべきものであり、我が国の憲法も、かかる見地の下に、国民がその総意を反映する租税立法に基づいて納税の義務を負うことを定め(三〇条)、新たに租税を課し又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要としている(八四条)。それゆえ、課税要件及び租税の賦課徴収の手続は、法律で明確に定めることが必要であるが、憲法自体は、その内容について特に定めることをせず、これを法律の定めるところにゆだねているのである。

 「課税要件及び租税の賦課徴収の手続は、法律で明確に定めることが必要である」といっているので、課税要件と賦課徴収手続を法定化する必要があるということで、手続も法定化が必要だということですね*3

 刑罰に関しても、犯罪・刑罰のほかに手続の法定のみならず、その適正さが要求される。

 さて、法律の留保論で説明したように、租税・刑罰⇒侵害⇒全部⇒権力⇒本質性と考えていくと、法律の留保論において、どこまで手続の法定化が要請されるのでしょうか?

 まあ、手続きの問題は、法律の留保論で説明しなくてもいいわけですので、別にその点にこだわらなくてもいいといえばいいので・・・(^^;。

 従来から、組織の法定化・委任立法の限界の問題は、例えば、憲法41条の「立法」の意義との関係で議論されています*4

 先ほども述べた、手続(事前手続?)を要請する根拠は、租税・刑罰以外については、憲法13条か、31条か、その併用か、法治国原理にするかで争われています*5

 明確性の要請は、租税・刑罰のほかは、表現の自由で議論されていましたが、本質性理論によれば、それ以外も要請しますので、憲法の条文だとどうするのでしょう?それぞれの人権規定か、41条の「立法」か、法治国原理なのでしょうか・・・(^^;。

 本質性理論で体系的に議論されていること、つまり、他の学説であれば別途議論されていることは、憲法の条文に着目すれば、1つの条文では説明しきれないのかもしれません。

  • 日本法への示唆?

 日本の法律でも、結構、詳細に規定されていて、専門家でも意味がわからないものがあるそうです。また、法律に詳細に規定されていないからこそ、地方公共団体が独自に定めることができる場合もあるそうです。

 そういう法律はさておき、自動車の一斉検問の問題もそうなのかも知れませんが、本来、法律で定めなければならない場合に、もっと法律に詳細かつ明確に規定すべきだともっと言っていいような気がします。いや、ドイツの例は書いてありますよ、たぶん論文には。

 ただ、それを日本法に導入(変換)するのであれば、どの程度(緩和して?)要請されるのかをきちんと具体例に出して・・・*6



 私は、その辺のところは詳しくないので、次回から(?)、委任立法や明確性についての有名な最高裁判決を取り上げるだけということで・・・(^^;。

*1:たぶん、私の勉強不足に起因するもの。

*2:現在ドイツにおける本質性理論の妥当性については、まったく知りませんので、あくまで日本の議論からの疑問点です。

*3:この「租税」の中に、保険税・保険料が入るかどうかなどについては、パス。しかし、保険料は、どうも社会保障法の先生の著作の登場以降(?)、若手の憲法学者は・・・。(´・ω・`)ナンデ?

*4:73条6号とか65条の問題には触れないでおく。

*5:事後手続は、憲法32条

*6:例えば、このようなものが問題になるのでしょうか(^^;。受刑者の自弁の持ち込み図書の省令での制限について、http://d.hatena.ne.jp/./grafvonzeppelin/20060105/p7