「法律の留保」・その3

 昨日の日記の続きにあたりますが、やはり、自分の言葉で書いたほうがいいような気もしてきたので、実質的には、一昨日の日記の続きにあたります。m(_ _)m



まず言い訳

 まず、法律による行政の原理がどのように確立していったかについて書く能力はありません。はじめは書こうと思ったのですが・・・(笑)。

 いや、例えば、効力教の教祖様であらされます、はむはむ様が1日5日のエントリーで書かれていますように、鎌倉幕府がいつ始まったかといわれましても、1192年は、いまや少数説だそうで・・・(^^;。

 イギリスの名誉革命も、「英国議会のイニシアティヴによる無血の国王交代劇ではなく、オランダの総督であったオレンジ公ウィリアムが、ルイ14世のフランスの脅威の下にあったオランダの国運を打開するために、オランダ軍の精鋭を率いてイングランドを急襲した事件」だと、現在の歴史学界では、広く受け入れられているらしい・・・*1
 この2つからだけではないですが、高校の歴史教科書レベルの知識では・・・orz。

 だからといって、どういう方に読んでいただくことを想定するのかということもあるでしょうが、毎日書いていると、(かつて論文を読んでいたとしても)細かく書くには限界があります。ということで、簡単に・・・(^^;。

「法律による行政」*2

 O・マイヤーが、「法律の支配」*3の3つの下位原理(原則?)として主張したのが、「法律の法規創造力」・「法律の優位」・「法律の留保」である*4

 その3つの下位原理が、今日の「法律による行政の原理」の3つの内容だとされている*5

 法律による行政の原理の趣旨は、大きく2つ*6

1.国民*7の代表機関である議会が、事前に法律を定めて、それに違反せずに行政が活動するという意味で、その部分については、行政が国民に対して不意打ちをしない、つまり、たとえば、国民にとって、してはいけないことが分かり、それ以外のことを自由に行うことができるという意味で、予測可能性が生まれる(自由主義的側面)。
2.国民の代表機関である議会が法律を定めることによって、行政がそれに従うわけですから、国民の意見が行政に反映される(民主主義的側面)。

 で、3つの下位原理(原則)がある(原則ということは、例外があるわけですね。)。

1.法律の法規創造力の原則
  法規(国民の権利義務を左右する法規範)は、法律で新たに作り出さなければならない原則。例外が、行政機関が法律の授権の下で定める法規命令。
2.法律の優位の原則
  法律の内容に矛盾する行政活動は違法とする原則*8
3.法律の留保の原則
  ある一定の領域の行政活動には、事前の法律の根拠が必要であるという原則。「法律」が必要がない場合が例外。

 一昨日、行政法の「法律の留保」の定義は、チョット違いましたね。「法律がなければ、権利・自由を侵害・制約できない(侵害留保説による説明)。」と書きました。侵害留保説によれば、「ある一定の領域」=「侵害領域」ということになりますね。「法律の留保」については、さまざまな学説があるので、それは次回に・・・。

 3つの関係については、どうしましょう・・・(^^;*9

*1:参照、長谷部恭男『憲法と平和を問いなおす (ちくま新書)』(ちくま新書、2004年)91−92頁。引用部もそこからです。

*2:ただし、このときの前提としては、立憲君主制において、君主の権力を制限するとしても君主の権力が強力であったということ、法律の内容の適正さが要求されていないという「形式的法治主義」だったということです。後者については、法律の内容の適正さが要請される、「法の支配」とか「実質的法治主義」とは異なるとされています。ちなみに、私のレベルですと、塩野宏行政法〈1〉行政法総論[第四版]』(有斐閣、2005年)62−63頁の注記は、不勉強なもので、さっぱり分かりません><。行政法を専攻している方に是非教えてもらいたいところです。失礼なことを言うかもしれませんが、専門家といっても、狭い分野について詳しいだけだと思います。基本的な大論点とはいえ、たぶん、先生方でも理解されているのは・・・(´・(ェ)・`)。いずれにせよ、邦語文献に当たること、当たったとしても、各論者が、英米独仏の論者を参照しているだろうから、原典を当たらないといけないこと、それらをちゃんと読みこなさいと、とてもとても・・・(^^;。だから、例えば、日本公法学会『公法研究第57号』(有斐閣、1995年)233頁以下(第二部会、討論要旨)なんて理解不能・・・orz。(´・ω・`)ソレオイシイノ?

*3:余談になるが、“法律の支配”をgoogleで検索したら、第一位が、http://www2u.biglobe.ne.jp/~hmminami/note-kenpou.htm。高校3年生って、このレベルまで勉強しているのでしょうか・・・(^^;。私の場合は・・・orz。

*4:O・マイヤーの「行政」観については、石川健治「政府と行政――あるいは喪われた言説の場」法学教室245号(2001年)。

*5:つまり、昨日紹介したHPでは、「法律による行政の原理」の定義の中に、「法律の優位」は組み込まれており、「法律の法規創造力」に言及がない。「法律による法規創造力」は、「法律の留保」の一部といわれたりもするし、両者の関係などについて争いがあるということで・・・(^^;。

*6:以下の部分は、どの教科書にも書いてあるところでしょう。宇賀克也「ベーシック行政法 第2回」法学教室284号(2004年)でも、もちろん可。

*7:もともとは、制限選挙下での財産と教養のある「市民」?

*8:問題は、どういう場合に「矛盾」となるかでしょうか?

*9:憲法41条との関係について、詳しく説明した教科書として、小早川光郎行政法〈上〉 (法律学講座双書)』(弘文堂、1999年)第二章。3つの関係や法律の留保論の最新学説について詳しい教科書は、大橋洋一行政法―現代行政過程論[第二版]』(有斐閣、2004年)19−37頁かな?