法律の文言でも・その2

 昨日の日記で、「同じような文言が使われている場合」と、「同じような文言」とぼかしました。「同じ文言」にしても良かったし、別の素材を取り上げるほうがいいのかもしれませんが・・・(^^;。

 さらに、2回で終わるのなら、「上・下」でしょ、なんて突っ込みも・・・。予定変更です・・・(^^;。



解釈問題を含めて

1.「公務員」

 元ネタといっては失礼かもしれませんが、ただ単に、塩野宏行政法〈3〉行政組織法[第二版]』(有斐閣、2001年)202−203頁に書いてある内容を紹介するだけです。それも、「刑法上の公務員」もパスして・・・。

 今回は、法律に「定義規定」がない場合で、異なる法律に「同じような文言」があったとしても、その範囲というか、定義が異なるという場合の具体例を挙げることが目的です(^^;。


 「公務員という身分を規律する意味での公務員法制における公務員の観念」*1には、例えば、特別職国家公務員である内閣総理大臣や国会議員は含まれないということなのでしょう*2。問題は、これと次の法律の「公務員」の範囲が一致するのかどうかです。


 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

 刑法上の問題を省略しても、私にはわからないところがたくさんあるところなので、軽く触れるということで・・・(^^;。

 「解釈論的には、原則として、当該不法な行為をした者の身分ではなく、当該行為が公権力の行使であるかどうかで適用関係が決まってくる」*3ということで、例えば、「弁護士会の懲戒委員の委員は国家公務員法上の公務員ではないが、弁護士に対する懲戒権の行使が委ねられているから、国家賠償法上の公務員に当たる。」けれども、「逆に身分上の公務員であっても、その行為が公権力の行使でなければ」国家賠償法1条の「公務員」には該当しない*4そうです(^^;。



2.「公権力の行使」

 ということで、国家賠償法1条の「公権力の行使」とは何なのかというのが気になりませんか?その本題からは、ちょっと横道にそれてしまいますが、あくまで、「同じような文言」だからといって、同じ意味ではないという話として、ちょっとだけ書こうというわけです。

 しかし、こちらも、私にはわからないところがたくさんあるところなので、軽く触れるということで・・・(^^;。


 「概ね国の私経済作用および国家賠償法2条の対象となるものを除くすべての活動を観念している。したがって、この中には学校の教育活動、行政指導なども含まれる。」*5


第三条  この法律において「抗告訴訟」とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟をいう。
 2  この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

 「行政庁の処分その他公権力の行使」の定義というか、その範囲について、いろいろ争いのあるところで、今年4月の改正行政事件訴訟法の改正によって、どのように変化を遂げるのか予断を許さないわけです。

 従来は、その理由はともかく、「行政指導は取消訴訟の対象にはならない。」などといわれていましたが、例えば、今年7月15日、最高裁判所は、都道府県知事が病院を開設しようとする者に対して行う病院開設中止の勧告は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとしたわけで、行政指導に該当すると思われる勧告についても、「行政庁の処分その他公権力の行使」に該当する「場合もある」ことになったわけです。

 ただ、今日の目的としては、「同じような文言」であるところの国家賠償法1条1項の「公権力の行使」と行政事件訴訟法3条2項の「行政庁の処分その他公権力の行使」は、定義がないので、解釈によって決せられるとして、その範囲が一致しないということは明らかにできたのではないでしょうか・・・。

 はて、この議論、どこかで見たような・・・(^^;。

*1:前掲書203頁

*2:国会議員について解釈の余地はあったが、特別職に含まれるというのが実務だそうです。前掲書204−205頁注1。

*3:前掲書202-203頁

*4:塩野宏行政法〈2〉行政救済法[第四版](有斐閣、2005年)274頁。

*5:前掲書275−276頁。