チャタレイ事件・その1

 11月17日の日記で、検閲該当性について、簡単に紹介しました*1。私の仮説(?)はさておき、判決文*2の読み方というか、そういうものは、説明できたのではないかと思います・・・orz。

 つまり、ある事件についての判決の結論(通常は合憲判決)⇒(重要な)論点の結論⇒その論点の理由付けという順番で、それを、どの程度詳細に理解しているか、っていう感じで、勉強の具合が進んでいくっていうことが理解していただけたでしょうか・・・(^^;*3





 今日は、税関検査事件の昭和58年大法廷判決を出発点として、憲法21条1項が保障する表現の自由の規制問題について。

 17日の日記の最後に引用した箇所(水際阻止の話)の直前の段落*4のみを、まずは取り上げます。

 思うに、表現の自由は、憲法の保障する基本的人権の中でも特に重要視されるべきものであるが、さりとて絶対無制限なものではなく、公共の福祉による制限の下にあることは、いうまでもない。また、性的秩序を守り、最小限度の性道徳を維持することは公共の福祉の内容をなすものであつて、猥褻文書の頒布等は公共の福祉に反するものであり、これを処罰の対象とすることが表現の自由に関する憲法二一条一項の規定に違反するものでないことも、明らかである(最高裁昭和二八年(あ)第一七一三号同三二年三月一三日大法廷判決・刑集一一巻三号九九七頁同昭和三九年(あ)第三〇五号同四四年一〇月一五日大法廷判決・刑集二三巻一〇号一二三九頁参照)。そして、わが国内における健全な性的風俗を維持確保する見地からするときは、猥褻表現物がみだりに国外から流入することを阻止することは、公共の福祉に合致するものであり、・・・

 参照されている前者の昭和32年判決は、有名な「チャタレイ」事件。後者の昭和44年判決は、これも有名な「悪徳の栄え」事件ですね。

 税関検査事件は、簡単に言えば、この2つの判決を参照しつつも、さらに、水際で止めても問題ないとしたわけですね。今日は、いつものように手抜きして、前者の判決の一部分のみ紹介ということで・・・(^^;。

 実のところ、憲法で有名な判例というのは、他の特定の法律学の分野でも有名な判例でして、いろいろな方が、いろいろなことを言っておられるということで、網羅的に読んで、検討して、ここに書くなんてことは、時間的にも能力的にも無理です。さらに、チャタレー事件は、当時は、文学者・作家も含めて、いわゆる法学者以外の方も議論され大きく話題になった事件です。

 もっとも、刑法(?)的には、事実認定の問題もかなりの比重を占めるかもしれないので、そういう意味では、この事件については、事件の概要を詳しく説明しないといけないでしょうか・・・。

 作品は、

 ではなかったorz。

チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫 ロ 1-6)

チャタレイ夫人の恋人 (新潮文庫 ロ 1-6)

 の、削除されていない版になるでしょうか*5

 事実の概要は、阪本昌成「58事件 わいせつ文書の頒布禁止と表現の自由――チャタレイ事件」芦部信喜高橋和之・長谷部恭男『憲法判例百選〈1〉 (別冊ジュリスト (No.154))[第四版]』(有斐閣、2000年)118頁でもお読みくださいといえば、少なくとも、法学部生なら問題ないのかなぁ。法学を学んだことのない方には説明したほうがいいのかな〜orz。



 ということで、一昨日アップしようと思ったネタが今日も完結せずorz。

*1:その論文の当否はともかくとして、最近の論文として、例えば、戸波江二「検閲概念の再検討」高見勝利・岡田信弘・常本照樹編『日本国憲法解釈の再検討』(有斐閣、2004年)なんて文献もありますよ〜。

*2:ただし、ロースクールでは読まされているらしい、下級裁判所の判決は全く触れてませんが。

*3:もちろん、いきなり判決文だけを読んで、全部整理して理解できたという方もいらっしゃるかもしれませんが・・・。

*4:判示事項では、漢数字の五、判決文自体では、四の1の最初の段落

*5:いま、普通の図書館で読めるのだろうか・・・。と思って、検索かけたら、小山書店の1950年出版のもの、ヒットするではありませんか。閲覧することができるのかなぁ・・・etc.。