レッテル貼りの危険性

 前回の日記から1ヶ月経ってしまいました…。

 古いネタを出すのも気が引けますが、書くネタがあまりないので、今年1月17日・24日にmixiで書いた話をもう1度こちらで…。



 反戦平和運動は、それは大いにやって貰って結構なことなのですが、軍隊にも応じられることと応じられないことがあるので、その線引きについてはある程度、了承して欲しいものです。

〔中略〕

 そんな資料を提示したらテロリストやスパイに貴重な情報を与える事になってしまいます。

 普通に利敵行為ですよ、それは・・・

 引用元:今年1月17日付の“反戦平和運動と利敵行為の線引き : 週刊オブイェクト”

 つまり、「そんな資料を提示したら」「普通に利敵行為ですよ」ということなので、論理的には、「提示される行為」をしていなければ、「普通に利敵行為」とはならないわけです。

 また、「軍隊にも応じられることと応じられないことがあるので、その線引きについてはある程度、了承して欲しいもの」とされている【だけ】でと読めますから、こういう運動される方に対して、眉をひそめたり、批判されるだけなんだろうと思います。

 この点は、「利敵行為」に該当すると断定しているわけではないし、断定した上で(刑法上の?)外患誘致に該当する・特定の法案の制定に賛成する、というような主張とは「距離がある」と思われます…(他の読者の読み方と違うかもしれませんが…。)。



 ただ、「利敵行為」がどういう範囲のもので、それに該当するのであればどのような効果があるのだろうかと、疑問に思いました。

 例えば、既に、当該エントリーのコメントや、“ASWOCの図面が公開されたこともありますから: 数多久遠のブログ シミュレーション小説と防衛雑感”で指摘されているように、過去にASWOC(対潜水艦戦作戦センター)の設計図面等が開示されてしまったわけですが、このような開示は、「そんな資料を提示したら、……普通に利敵行為ですよ」ね。

 そうだとすると、「利敵行為をした者」に該当するのは誰でしょうか? 例えば、

 情報公開請求をした人?
 「ずさんな情報公開条例」を作った人たち?
 「ずさんな情報公開条例」に則って、開示してしまった市当局?
 「ずさんな情報公開条例」に則って、開示の執行停止を認めなかった裁判所?(最高裁判所も含む。)

 他にもあるかもしれませんが、以上のような人たちのどの範囲までが、「利敵行為をした者」に該当するのでしょうか?
 一番の戦犯は、果たして、「情報公開請求をした人」?

 「情報公開請求したした人」は、どういう理由で、「利敵行為をした者」になるのでしょう?

 (規定の定め方にもよるけれど、)請求なければ開示なしという意味で正犯的?

 それとも、開示することを容易にしたという意味で、従犯的?



 もちろん、「眉をひそめたり、批判する」ことは自由だし、それを止めようとは思いませんが、どのような人たちが「利敵行為をした者」に該当し、なぜ該当するのか、線引き・理由の提示が必要なのかなと思いました。

 まあ、憲法学の人権論でいうところの「公共の福祉」もあいまいなところがあって、制約する側としては便利な言葉なのだけれど、「利敵行為」もそれに近いというか、「軍事的合理性」と同様、それらすべてを「公共の福祉」に含めて人権の制約原理にできるとか、人権の制約原理ではないとしても批判の正当化根拠になる、ということにはならないのではないかなあと…。



 あと、「何も周辺住民に意地悪しているわけじゃありません」と断りつつ、「というかなんで周辺住民や議員がそんな情報を欲しがるんです?」と疑問を呈する部分に若干疑問が残ります。

 もちろん、その直後に、「そんな危険を冒して住民に知らせる意味が分かりません。」とされていますから、公開する危険と比較して、公開する意味に疑問を呈されているんでしょうが、はたして「自明」なんでしょうかね…。



 その「相場」なるものをどうやって決めるのか、「相場観」の異なる人に対して、「専門家」として、どう説明されるのだろうかと、気になるところです。

 ま、私は、軍事についても素人ですし、ちょっとかじった法律論的な発想から書いているだけなので、「ちゃんと相場知っているんか?」と聞かれたら、今のところ「No」と答えざるを得ないのですが…。



 と、ここまで書いて思い出したことは、「軍事のことだけではなく、外交のことにも詳しい」とおっしゃっていた方がおられたなと。

 最近の事件について、さまざまな「評価」がありますけれど、一義的に結論あるんでしょうかね。

 ま、2006年の段階の話なので、もっと新しかったり、もっと良い書籍があるかもしれませんが、「外国の外交担当者の必読書」*1として挙げられているのが、Philip Bobbitt『The Shield of Achilles: War, Peace and the Course of History』なので、これでも読んでいただければいいのではないかと思われ…(私は、外交担当者でもないし、外交に詳しくなくてもいいかなと思っているので、読んでないけれどね!!)。

*1:長谷部恭男『憲法とは何か (岩波新書)』(岩波書店、2006年)63ページ