旭川市国民健康保険料条例事件の議論についてよく分からないこと

 旭川市国民健康保険料条例事件については、この日記で、昨年2月27日3月1日3月14日3月29日と、なぜか4回も、取り上げていたんですね…。(´・ω・`)ナゼ?

 2年近くの前のことなので、記憶が定かではないのですが、再度取り上げようと思った当初の記憶では、昨年2月よりも前に、ある方にこの件について検討するように言われたような気がしたんですね。

 そして、その後昨年1月31日をもって、月に帰ってしまったと…。*1

 前後関係は、勘違いだったとして、言われたことは確かなので、遅ればせながらで申し訳ないのだけれど、その当時答えられなかったことを、今年中に書いておこうかと…(^^;。

 しかも、何も知らない状態で始めて、ちょっと調べてはかなり休み、ちょっと調べてはかなり休み、の繰り返しだったので、大したことは書けません。だから、「私には、よく分からない」という形での回答…。(´・ω・`)ルパン




 昨年3月1日に最高裁大法廷判決*2が出ていますから、そこからスタートしましょう。

 その内容(以下、租税条例主義の部分に限定する。)の要点を、なぜかウィキペディアから(^^;*3

(1)国又は地方公共団体が、課税権に基づき、その経費に充てるための資金を調達する目的をもって、特別の給付に対する反対給付としてではなく、一定の要件に該当するすべての者に対して課する金銭給付は、その形式のいかんに関らず、憲法84条に定める租税に当たる。
(2)市町村が行う国民健康保険の保険料は、被保険者において保険給付を受け得ることに対する反対給付として徴収されるものであるから、憲法84条の規定が直接に適用されることはない(国民健康保険税は形式が税である以上憲法84条の規定が適用される)。
(3)租税以外の公課であっても、賦課徴収の強制の度合い等の点において租税に類似する性質を有するものについては、憲法84条の趣旨が及ぶ。 その場合であっても、賦課要件が法律又は条例にどの程度明確に定められるべきかなどのその規律の在り方については、当該公課の性質、賦課徴収の目的、その強制の度合い等を総合考慮して判断すべきである。
(4)市町村が〔行う〕国民健康保険の保険料も、憲法84条の趣旨が及ぶが、条例において賦課要件をどの程度明確に定めるべきかは、賦課徴収の〔強制の〕度合いのほか、社会保険としての国民健康保険の目的、特質等をも総合考慮して判断する必要がある。
(5)本件条例は、保険料率算定の基礎となる賦課総額の算定基準を明確に規定したうえで、その算定に必要な費用及び収入の各見込額並びに予定集能率〔収納率〕の推計に関する専門的及び技術的な細目にかかわる事項を、市長の合理的な選択にゆだねたものであり、上記見込額の推計については国民健康保険事業特別会計の予算及び決算の審議を通じて議会による民主的統制が及ぶものということができるから、本件条例が、保険料率算定の基礎となる賦課総額の算定基準を定めた上で、市長に対し、同基準に基づいて保険料率を決定し、決定した保険料率を告示の方式により公示することを委任したことが憲法84条の趣旨に反するということはできない
(6)賦課総額の算定基準及び〔賦課総額に基づく〕保険料率の算定方法は、本件条例によって賦課期日まで明らかにされており、〔賦課総額に基づいて算定される保険料率については〕恣意的な判断が加わる余地はなく、〔これが〕賦課期日後に決定されたとしても法的安定性が害されるということはできないから、市長が各年度の賦課期日後に保険料率を告示したことは憲法84条の趣旨に反するとはいえない。

 注:太字は原文。カッコ・消し線は、しが研が付した。

以下、私の感想・不明な点などを「一部」公表…(^^;。

(a)最高裁判決によれば、憲法84条は、課税要件及び租税の賦課徴収の手続きが法律で明確に定められるべきこと(課税要件法定主義・課税要件明確主義)まで要求するという意味で、国民に対し義務を課し又は権利を制限するためには法律の根拠を要するという法原則(「法律の留保」)を租税について厳格化した形で明文化したものだとしています。

 とすると、「法律の留保」の段階では、法定主義・明確主義といった本質性理論の要請を厳格には要求しないように読めますね…。

 ましてや、直接適用されない国民健康保険料をや。

 まあ、いずれにせよ、適用されたとしても、どの程度の緩和が認められるかは議論の余地はあるのですが…*4

(b)そうすると、最高裁判決のように「租税」の範囲を絞りつつその領域については法定主義・明確主義を堅持し*5、それ以外については憲法84条の趣旨に及ぶかどうかで検討する立論もありうるし、「租税」の範囲を拡大しつつ、「租税」の実質に応じて柔軟に対応するという立論も可能なのかなあと。

(c)最高裁判決は、国民健康保険税は形式が税である以上憲法84条の規定が適用されるのに対し、国民健康保険料は直接には適用されないとしています。目的税が、「固有の意味の租税」に含まれるのかどうかわかりませんが(笑)、形式が税であるということもあり、結論としては、直接適用されるということで落ち着くわけですね。

(d)国民健康保険料の賦課要件の明確性の問題、最高裁判決によれば、憲法84条が直接適用されないから、賦課徴収の強制の度合いのほか、社会保険としての国民健康保険の目的、特質等をも総合考慮して判断する必要があるとして、社会保険としての国民健康保険の目的・特質等を強調しているわけですが*6、「実質的」に見ると、保険税のみならず、目的税との共通性が…。

(e)補足意見などのように「保険者自治」を強調すると、そもそも国家とは地方公共団体とは、って話に膨らみそうなので、挫折(笑)。

(f)賦課総額に基づいて算定される保険料率が賦課期日後に決定されたわけですが、賦課期日前に決定できないのかなあ…。




 執筆当初の構想とまったく違うものになってしまった。時間かけて書き進めていっても、たいした内容のものではない…orz。(´・ω・`)シュミアス ヨミナオシテモ イミフメイ

*1:今年の同じころに同じようなことがあったんだけれど、帰らなかったのよね。理由は慣れたから(笑)。来年の同時期にはこういうことは起こらないでしょう…。

*2:なお、第1審の判決はこちら控訴審の判決はこちら

*3:これを紹介するだけでも役にはたつかと…(^^;。

*4:いきなり、刑法の教科書で恐縮ですが、山口厚刑法総論 第2版』(有斐閣、2007年)18頁注12には、「刑罰の解釈は技術的になっており、一般人が処罰範囲を認識しうるかには、実際上問題がある。この意味で、さほど厳格な明確性が要求されうるものでないことは認めざるを得ないであろう。」と書かれています…。直接適用されたとしても…(^^;。

*5:堅持できているかどうかは別論。

*6:この見解に影響を与えたであろう方の最高裁判決の評釈として、倉田聡・判例評釈574号180ページ以下。