名指しはしませんが

 のんびりとゆっくり宇賀克也『行政法概説〈2〉行政救済法 行政救済法』(有斐閣、2006年)を読みつつ、ちょっとずつ、日記を埋めていっております(^^;。
 今日は、大阪空港訴訟における民事差止めの可否について*13月15日の日記の続編。




 ということで、あまり長く引用するのも何なので、簡単に。
 厚木基地事件(最判平5・2・25)において、民事上の請求として自衛隊の使用する航空機の離着陸等の差止め及び自衛隊機の騒音の規制を求める訴えは、不適法却下にしたわけですが、この理論構成として、防衛庁長官の権限行使が、周辺住民の騒音の受忍を義務づけるという意味で、「公権力の行使」にあたるからだとしています(同書160ページ参照)。

 このような理論構成をとったのは、同書162ページから引用すると、大阪空港訴訟(最大判昭56・12・16)が、「民間航空機の運航に起因する騒音被害軽減のために空港の供用の民事訴訟による差止めを不適法としたこととの均衡上、自衛隊機の運行差止めを民事訴訟で求めることを認めるわけにはいかず、他方、大阪空港事件で民事差止めを却下するポイントとなった航空行政権の実体をなす民間航空会社に対する許認可権は厚木基地事件の場合には存在しないので、防衛庁の訓令による自衛隊機の運行の指示が周辺住民に受忍義務を課す公権力であると構成することによって、大阪空港事件最高裁判決と類似の論理を用いようとしたのであろう。しかし、大阪空港事件自体、民事訴訟による差止めを不適法とすべきではなかったと思われる。」(強調部は、しが研が行った。)



 まあ、一般法として膨大な嬢分数条文数を誇る民事訴訟法があるわけですし、研究者には、それぞれの専門分野があり、専門分野ですら知らないこともたくさんあるでしょうし、ましてや、公法と私法が違うと言われているわけですから、ご存知のないことを非難すべきことではないでしょうね・・・。しかも、今の教科書の執筆者の考え方が、30年後には覆されるかもしれませんしね・・・。

*1:小田急高架事件(最大判平17・12・7)の原告適格については、ジュリスト4月15日号を入手して読んでからになるのかな?書かないのかな?ちなみに、揚げ足取りだと誰かから怒られるかもしれませんが、同書170−171ページ・176ページの書き方は、どの点に原告適格を認めたをそれほど書いていないと言う意味で、あっさりしてますね(なんて言ったら、ほとんどの判決もそうなるのかな・・・(^^;。)。あと、急いで赤を入れられたのでしょうか、判例索引が、最判平17・10・25及び最判平17・11・1と混同されていますね(469頁)。ここを見ている奇特な方の中で、著者と距離的に近い方はお知らせしてください。m(_ _)m