行政不服審査法の準用規定と行政法の教科書

 宇賀克也『行政法概説〈2〉行政救済法 行政救済法』(有斐閣、2005年)をようやく読み始めています。まだ、行政不服審査法のところだけです・・・(^^;。上記タイトルはちょっと一般的に書きすぎかな。私が、教科書の本文を読むだけ、しかも、条文・判例を調べないで勉強しているからなのかもしれませんが、宇賀教科書で読んだ部分を例にして、教科書だけを読んだときの印象をちょっとだけ。




 条文はいちいちあげませんが、行政不服審査法は、行政庁の行為のうち、処分(継続的事実行為を含む。)と不作為を2つ取り上げ、その2つの行為に不服のある一定の者がその違法性・不当性の審査を求め、当該行政庁・その他の行政庁が、それを判断します。

 その類型として、処分・不作為について、異議申立て・審査請求があると*1

 行政不服審査法は、「処分についての審査請求」について多くの条文を割き、それ以外については、「処分についての審査請求」の規定を準用している。あっ、目次だけ引用しましょうか(^^;。

 第一章 総則 (第一条―第八条)
 第二章 手続
  第一節 通則(第九条―第十三条
  第二節 処分についての審査請求(第十四条―第四十四条)
  第三節 処分についての異議申立て(第四十五条―第四十八条)
  第四節 不作為についての不服申立て(第四十九条―第五十二条)
  第五節 再審査請求(第五十三条―第五十六条)
 第三章 補則(第五十七条・第五十八条)
 附則

 処分についての審査請求は、58ヶ条中31ヶ条しめている。例えば、処分についての異議申立て・不作為についての不服申立て(異議申立て&審査請求)・再審査請求の規定は4ヶ条ずつ。

 ま、そんなこんなで、48・52・56条に「処分についての審査請求」の規定を準用する規定がある。



 ところで、法学教室の連載をまとめた形になっていると思われる宇賀克也『行政法概説〈2〉行政救済法 行政救済法』(有斐閣、2005年)。痒いところに手が届く記述と申しましょうか、平易な文章で、基本的な事項も詳しく書かれているし、高度なことも書かれていて、教科書として非常に良い本だと思う。

 ただ、行政不服審査法の準用規定について、冒頭に言ったような、私の不勉強ゆえに、他の教科書と同様、若干の不満がある。

 つまり、一般の教科書は、条文の構造もそうなっているからと言うこともあるが、オーバーに言うと、処分についての審査請求のところが詳しく書かれていて、それ以外のところは軽くしか触れられていないというところに不満がある。宇賀教科書は、内容の豊富さゆえに、おそらくは、それほど不満はないのですがあえて・・・*2


 例えば、51ページの「4) 口頭意見陳述権」から引用すると、

 審査請求人または参加人の申立てがあったときは、審査庁は、申立人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならない(25条1項ただし書)。異議申立て、再審査請求の場合も同様である(48条・56条)。

 処分についての異議申立てと再審査請求については口頭意見陳述権が認められているのだなあと、教科書を読めば条文を読まなくても分かる。一応、まず準用規定を、まず1つだけ引用。

 (審査請求に関する規定の準用)
第四十八条  前節(第十四条第一項本文、第十五条第三項、第十七条、第十八条、第二十条、第二十二条、第二十三条、第三十三条、第三十四条第三項、第四十条第一項から第五項まで、第四十一条第二項及び第四十三条を除く。)の規定は、処分についての異議申立てに準用する。

 ということで、48条は、処分についての異議申立てについて、25条1項但書きを準用していることはわかりますね。準用したらどのような条文に変換されるかは、今日は省略。



 さて、問題は、それ以外、正確に言えば、不作為の不服申立てについて準用はないのか?

 (処分についての審査請求に関する規定の準用)
第五十二条  第十五条第二項及び第四項、第二十一条、第三十七条から第三十九条まで、第四十一条第一項並びに第四十二条第一項から第三項までの規定は、不作為についての異議申立てに準用する。
 2  第二節(第十四条、第十五条第一項及び第三項、第十六条から第二十条まで、第二十四条、第三十四条、第三十五条、第四十条、第四十一条第二項並びに第四十三条を除く。)の規定は、不作為についての審査請求に準用する。

 まず、1項。不作為についての異議申立てには、25条1項但書きが含まれていないから、準用されない。

 次に、2項。25条1項但書きが除かれていないから、不作為についての審査請求に、準用される。

 で、宇賀教科書には、不作為についての審査請求に、口頭意見陳述権の準用があることが述べられていない。



 先ほども述べましたが、条文が処分についての審査請求を中心に書かれていること、紙幅の関係で、それぞれの不服申立てについて、準用の有無を書くのは、難しいのかもしれません。条文を読めば分かることなのかもしれません。

 しかし、それぞれの不服申立てについて、もう少し丁寧に書いて欲しい。コンメンタールを使わないような人、重要な法律の条文を読もうとしない人が大多数だと思われるのですが、詳細な教科書を書かれる方には、あともう少し書いて欲しいなあと贅沢なことを考えるダメダメな私からの若干の感想です*3

 ということで、日記をあまり更新しないと言いつつ、日記を埋めるのでありんした。(´・ω・`)

*1:処分については、類型的には再審査請求・再々審査請求もある。

*2:これくらいの教科書を書くためにどれだけ勉強をしないといけないのかという話。

*3:あと、行政手続法・情報公開法の水準に達していない手続規定である行政不服審査法が早急に改正されるべきであるということが分かりやすく書かれていますが、やはり、行政手続法や情報公開法の内容を知っていないとわかりませんね。