3月17日分の記事から



1.民事訴訟における記者の取材源秘匿

 <東京高裁>NHK記者の証言拒絶認めた地裁決定を支持

 米国の健康食品会社への課税処分に関する報道を巡り、NHKの記者が民事裁判の証人尋問で取材源の証言を拒絶したことについて、東京高裁は17日、拒絶を正当と認めた新潟地裁決定(05年10月)を支持し、会社側の即時抗告を棄却する決定を出した。
 雛形要松(ひながたようまつ)裁判長は「報道機関が公務員に取材を行うことは、その手段、方法が相当なものである限り、正当な業務行為。取材源に(守秘義務違反など)国家公務員法違反の行為を求める結果になるとしても、ただちに取材活動が違法となることはなく、取材源秘匿の必要性が認められる」と述べた。
 同じ報道で、読売新聞記者の拒絶について東京地裁は14日、「取材源が公務員などで、守秘義務違反で刑罰に問われることが強く疑われる場合は証言拒絶を認めない」とする決定を出していたが、この日の高裁決定はこれを事実上否定した。
 高裁決定はまず「報道機関の取材活動は、民主主義の存立に不可欠な国民の『知る権利』に奉仕する報道の自由を実質的に保障するための前提となる活動」と定義。取材源が秘匿されなければ、その後の取材活動が不可能になる性質があり、民事訴訟法上の「職業の秘密」にあたるとした。民訴法は「職業の秘密に関する事項」についての尋問には証言を拒絶できると規定している。
 そのうえで「証言拒絶による裁判への影響は、取材源秘匿により保障される取材活動の持つ民主主義社会における価値に、勝るとも劣らないような社会的公共的な利益の侵害が生じると認めることは困難」と指摘した。
 食品会社側の「取材源は公務員の守秘義務違反を犯し、保護に値しない」との主張は、「取材方法の適否の判断を離れて、取材源の法違反を検討する必要はない」と退けた。
 健康食品会社とその日本法人は、日米の税務当局の調査を受けて97年に課税処分されたと日本で報じられた。会社側は信用失墜などの損害を受けたとして日本の税務当局に協力した米政府に損害賠償を求めてアリゾナ地区連邦地裁に提訴。報道した日本のマスコミ各社の記者らは国内の裁判所で嘱託尋問されていた。【武本光政】
 ◇国民の「知る権利」の重要性、改めて認める
 記者の取材源秘匿を正当と判断した東京高裁決定は、国民の「知る権利」の重要性を改めて認めた。同時に、取材源が公務員の場合に秘匿を認めないとした15日の東京地裁決定の特異性を浮き彫りにした。
 取材源の秘匿と公務員の守秘義務との関係を巡っては、78年の最高裁決定が知られる。報道機関の取材が場合によっては公務員の守秘義務と対立することを認めたうえで、「その手法・方法が法秩序に照らし相当なものとして社会観念上是認されるものである限りは、違法性を欠き正当な業務」と判示しており、高裁決定もこれを踏襲した。  高裁決定はさらに、取材源秘匿によって守ろうとする対象を、守秘義務を侵す可能性のある公務員ではなく、「報道機関の取材活動上の利益、ひいては民主主義社会の価値ない利益」との判断を明確に示した。これにより「取材方法の適否を離れて取材源の法違反の存否を検討する必要はない」と述べ、取材方法の適否を検討せずに守秘義務違反を重視した東京地裁決定を完全に否定した。
 会社側が特別抗告すれば、民事訴訟の中で報道機関が取材源の秘匿を理由に証言を拒絶することが認められるかどうかの初判断が最高裁で下される可能性があるが、高裁決定は大きな指針となると言える。【武本光政】
毎日新聞) - 3月17日17時0分更新

 長いけれども全文引用しました。ミクシィでは13:03に配信されていました。なるほど、米国の健康食品会社への課税処分に関する報道という点で、先日の東京地裁の決定と同じ事案だったわけですね・・・。
 それはさておき、最後の段落、「民事訴訟の中で報道機関が取材源の秘匿を理由に証言を拒絶することが認められるかどうかの初判断が最高裁で下される可能性がある」の「初判断」とはどういう意味なのでしょうか?

 憲法の教科書を紐解くと、北海道新聞島田記者事件の最高裁決定、つまり、最判昭和55年3月6日決定(判例時報956号32頁)なんてものがあるのですが・・・(^^;。



2.ブログ小説と名誉毀損

 ブログ小説:元社員に「名誉棄損」で賠償命令 京都地裁

 インターネットのブログ(個人の日記風簡易型サイト)に書かれた小説のモデルにされ、名誉を傷つけられたとして、京都市内のタクシー会社が元運転手の男性(58)に慰謝料など1100万円の賠償などを求めた訴訟で、京都地裁中村哲裁判官は16日、「社会的評価や信用を低下させた」などとして男性に100万円の支払いを命じた。ネット問題に詳しい岡村久道弁護士(大阪弁護士会)は「ブログでの名誉棄損を認定した判決は聞いたことがない。今後は同様の問題が増えると予想され、警鐘になる」と話している。

 判決によると、男性は04年4〜5月、24回にわたり同社をモデルとした小説をブログに掲載し、「社内で運転手が飲酒し、管理職も放置」「幹部が会社の金を横領」などと表現。会社や幹部は仮名だったが、自己紹介で会社や自分を実名表記した。同社は小説掲載を理由に解雇したが、男性が解雇無効を求めて提訴。男性が05年2〜3月に全回分を再掲載したため、会社側が反訴していた。

 判決は「男性が主張するだけの事実は認められない」としたうえで、「同社を知る業界の者が読めば、同社がモデルで、事実と思うことが想定される」と指摘した。

 男性は判決後、「内容は事実。今後もブログで公表していく」と話した。これに対し、同社側の弁護士は「場合によっては名誉棄損での刑事告発も検討せざるを得ない」としている。

 岡村弁護士は「情報発信の敷居が低くなったのはいいが、不特定多数の人が見る影響力の大きさを考えねばならない。その危うさを象徴する判決」と話している。

 ブログは、運営事業者に登録して手軽に開設できる。総務省によると、05年9月末現在、国内では延べ約473万人の利用者がいるという。【太田裕之】
毎日新聞) - 3月17日3時0分更新

 日本では、名誉毀損の勝訴判決は認められやすいとか・・・。どういう場合に名誉毀損に当たるのか、よくわかりません(^^;。



3.偽装請負

 <違法派遣>経産省所管の財団法人が偽装請負 労働局が指導

 経済産業省所管の財団法人「企業共済協会」(東京都港区)が、職業安定法で禁止されている違法派遣(偽装請負)をしたとして、厚生労働省東京労働局から是正を指導されていたことが分かった。国の外郭団体による違法派遣は、極めて異例だ。同協会は違法派遣だったことを認め、16日に改善策を東京労働局に提出した。
 同協会は、厚労相に無許可で、経産省所管の独立行政法人中小企業基盤整備機構に正職員4人を含む嘱託社員など計50人を派遣し、共済業務などに従事させていた。同協会は78年の設立時から、同機構の前身の中小企業総合事業団に労働者を派遣しており、違法状態は30年近く続いていたとみられる。04年度の場合、協会収入の27%に当たる2億1800万円の対価を得ていた。
 派遣事業をするには厚労相の許可が必要だが、偽装請負は「業務請負」を装って無許可で派遣する手口。業務請負は、受注先(同協会)が発注元(同機構)にリーダーを含む労働者を送り込み、労働者がリーダーの指示で働く形態で、発注元は労働者を指揮監督できない。  派遣の場合は、発注元が労働者を直接指示できる半面、安全管理や社会保険など労働者に対する事業者責任を負わねばならない。民間では、発注元の負担を軽くするため偽装請負が後を絶たず、04年度には全国で1024事業者が行政指導を受けた。
 同協会の吉田直是専務理事は「法律的な知識が不十分だった。4月から是正したい」と話し、「78年当時の事情を知る人間がいないので分からないが、発注元の負担を軽くする意図はなかったと思う」と釈明している。
 同協会は小規模企業共済制度の調査研究などをしていて、会長ら役員4人は経産省からの天下り。同機構は中小企業の新事業展開の促進などの目的で設立され、理事長ら役員6人が同省OB。【早川健人】
毎日新聞) - 3月17日15時39分更新

 今日は、なぜか毎日新聞の記事ばかりです(^^;。ミクシィで紹介していない記事も紹介したので、今日は、これでいいや。(´・ω・`)



【19:19追記】

4.入会権と男女平等

 男性限定の規定は差別=非世帯主には認めず−沖縄の米軍用地料訴訟・最高裁

 沖縄本島北部の米軍用地に入会権を持つ団体が正会員を男性の世帯主に限定し、軍用地料を女性に分配しないのは違憲として、沖縄県金武町の女性29人が同団体を相手に分配金の支払いなどを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(津野修裁判長)は17日、「入会要件のうち、男性に限定した部分は差別だが、世帯主に限る部分は不合理とは言えない」との判断を示した。
 その上で、女性全員の請求を棄却した2審福岡高裁那覇支部判決を破棄、世帯主の女性2人の審理を同高裁に差し戻した。
  (時事通信) - 3月17日18時0分更新

 2月17日の日記で紹介していたので、追記します。

 判決文は、こちら