文言と解釈技法

 あまり書く準備ができていないので、基本的なものを・・・(^^;。法学入門的な話です。ただ、これも、引用をきちんとやろうとすると大変だし、結構難しい問題でもあったりするので・・・。私の話が正しいかどうかは・・・(^^;。




 条文の文言にのみ着目した場合*1、次のような解釈技法があるそうです。

1.文言解釈(文理解釈)
 辞書的・文法的手法で文言の意味を明確化する解釈技法。
2.拡大解釈(拡張解釈)
 文字の意味を通常の辞書的・文法的意味よりも拡張して解釈する技法。
3.縮小解釈(制限解釈)
 通常の辞書的・文法的意味では広すぎるので、文字の意味を縮小して解釈する技法。
4.反対解釈
 ある規定を前提に、その規定されている場合とは逆の場合には、その逆の効果が生じるとする解釈技法*2
5.類推解釈
 類似の事例で、一方に規定があり、他方にない場合、他方にも同趣旨の規定があるとみなして解釈する技法。
6.勿論解釈(当然解釈)
 ある事項については規定があり、他の事項に関しては規定がない場合で、後者に規定がおかれなかったのは、当然(自明)のことだからおかれなかったと解し前者の規定の趣旨をより一層、強い理由のもとに後者の事項にも規定があるものと解釈する技法。

 硬い言葉で書きましたが、何のことを言っているか分かりますか?本当は、実際に今ある法律(現行法)で説明したほうが分かりやすいのかもしれませんが、公務員試験の教養試験・法学検定試験・行政書士試験などの対策も含めて、有名な事例で説明をば。


  • 車馬通行止め

 意味わかりますよね。「車と馬は通行できない。」ということです。

1.とりあえず、「車」と「馬」の定義は、今は、明確にはしないでおきますが(辞書を調べてくださいね。)、何となくはわかりますよね。だから、「“車”と“馬”は通行できない」のです(文言解釈)。

 次に、その文言解釈を前提に、結論先取りで考えましょう。

2.では、「人間は通行できる」と結論付けたいときは、「反対解釈」をすればいいのです。

 つまり、人間は、通行禁止の対象である“車”と“馬”に含まれないから、通行できるのだと。

 ここから若干ややこしくします。

3.では、自転車はどうか?
 これも結論から考えましょう。

 (a)まず、「自転車は通行できる。」ことを想定してみましょう。もし、先ほどの発想で、「人間」と同様に、辞書的・文法的意味においては、「自転車」は「車」には含まれないと考えれば、反対解釈という技法を使えばよいわけです。

 また、別の手法で、同じ結論をとることもできます。それは、縮小解釈によってできますす。つまり、本来の辞書的・文法的意味においては、「自転車」は「車」に含まれるが、何らかの理由で、禁止される“車”には含まれない、つまり、通行が禁止される“車”の範囲を縮小して「自転車は通行できる。」と解釈するわけです。

 (b)逆に、もし、「通行させたくない」と思った場合、どの解釈技法をとればよいでしょうか?

 辞書的・文法的意味において、「車」の中に「自転車」が含まれていたら、まさに、文言解釈で決まりですね。

 また、もし、辞書的・文法的な意味において、「車」の中に「自転車」が含まれない場合には、通行が禁止される“車”の範囲を拡大をして“自転車”も“車”に該当すると解釈することができるかもしれません(拡大解釈)。

4.牛の場合

 鹿でもいいのですが、牛で(^^;。

 (a)ふつう、辞書的・文法的意味において「馬」には「牛」は含まれませんから、通行できるのが当然と思われませんか?これは反対解釈という解釈技法を使うということですね。

 (b)でも、通行させない解釈技法もあるわけです。自転車のときと同じ処理をすれば言いわけです。

  ただ、辞書的・文法的意味において、「馬」に「牛」を含むのは難しいでしょうから、文言解釈は難しいでしょうか。

  ということで、まず考えられるのが、拡大解釈。つまり、辞書的・文法的意味において、「馬」に「牛」は含まれないけれども、何らかの理由で、通行禁止の対象となる“馬”に“牛”が含まれるように“馬”の意味を拡大するわけです。

  別の解釈手法で牛の通行を禁止することも可能です。それが、類推解釈。つまり、文法的・辞書的意味においては、「馬」に「牛」は含まれないけれど、“馬”の通行を禁止しているのは、(道路を損壊したりする)大型で重量のあるからであるから、禁止する規定はないけれども、同じように大型で重量のある“牛”も通行を禁止すべきだとするのです。

 ここまで理解できましたか?ここまでが分からないと次も分からないでしょう・・・(^^;。
  
5.象さんの場合*3

 (a)ふつう、辞書的・文法的意味において「馬」には「象」は含まれませんから、通行できるのが当然と思われませんか?これは反対解釈ということですね。

 (b)でも、先ほどと同じように、通行させない解釈技法もあるわけですね。

  まず、牛の場合と同じように考えると、拡大解釈・類推解釈で禁止することができます。

  つまり、辞書的・文法的意味において、「馬」には「象」は含まれない。だから、本来であれば、反対解釈により、通行が可能なんだけれども、禁止させることができるわけです。例えば、何らかの方法で、禁止される対象である“馬”の範囲を拡大して“象”も含ませる(拡大解釈)。“馬”の通行を禁止しているのは、(道路を損壊したりする)大型で重量のあるからであるから、禁止する規定はないけれども、同じように大型で重量のある“象”も通行を禁止すべきだとするのです。

  さらに別の方法で禁止することもできます。すなわち、確かに、「馬の通行禁止」の規定はあるが、「象の通行禁止」を定める規定はない。しかし、“馬”の通行を禁止している趣旨は、(道路を損壊したりする)大型で重量のあるからであるから、“馬”よりも大型で重量のある“牛”も通行を禁止すべるのは当然なんだと。



 これをまとめると、つまり、辞書的・文法的意味を固定した場合、例えば、「牛の通行を認める」こともできるし、「認めない」こともできる。しかも、同じ結論をとるのに複数の解釈技法が存在するということが分かりますね。

 そして、試験的に言えば、例えば、「牛の通行」を禁止する解釈技法として、拡大解釈と類推解釈があり、「象の通行」を禁止する解釈技法として、拡大解釈と類推解釈と当然解釈がある。牛と象、類推解釈と当然解釈の組み合わせ問題が出てきたら、どう答えるのかは分かりますよね(^^;。



 ここから、暗記物の試験とは無関係に、さらに発展させましょう。

 (a)まず、一応、辞書的・文法的意味を固定しましたけど、本当に辞書的・文法的意味は一義的に明確ですか?辞書だって、いくつかの意味が書かれているのが通例。文言解釈することですら大変というか限界がある。

 (b)その明確に限界があるとすると、他の解釈手法も実は相対的です。「馬」は一律通行止めというけど、例えば、相対的に小型で重量の軽い、「サラブレッドの子馬」、さらに「ポニー」「ラマ」の通行はどうするのとか・・・。文言解釈か拡大解釈で通行禁止?反対解釈か縮小解釈で通行OK? まあ、法律で定義するのが解釈論争が起きない早道なのですが・・・(^^;。

 (c)類推解釈は、まあ、同じ趣旨ってところで何となく理由があるかなと思われるかもしれませんが、実は類推解釈もそうだし、拡大解釈・縮小解釈は特にそうだと思うのですが、なぜ、拡大するの?縮小するの?ということを語っていません。さらに言えば、なぜ禁止するの?禁止しないの?ということが、特定の解釈技法をとるということではあまり説得的ではありません。

 結局、これらの解釈手法は、具体例について、結論を「直接」示すためのお作法(目印)みたいなものにすぎず、さらに、解釈者の価値判断やその解釈技法をとる理由が問われます。結論が同じであっても、別の解釈技法も取れるわけですから、結論を同じくしても別の解釈技法を使う者であれば、「なぜ自分と異なる解釈技法を使うの?」と思うであろうし、結論を異にする者であれば、特に、その解釈技法をとる根拠・理由付けを聞きたくなるはずです。そのときに、ちゃんとした根拠・理由付けを考えるというのが、文言を解釈する際に必要なわけです。

 まあ、そういうことも含めて、(日本の法律・判例を体系化することも含めてですが)外国の判例・理論を紹介しつつ日本で応用できないか、また、日本の現状を批判し変革を模索しようとすることを主任務にしているのが、いわゆる研究者(大学教員)なのかな?
 (d)それはさておき、結局、「法律に書いてあるではないか」といわれましても、「本当に書いてあるのですか?」「いや、書いてある。」という水の掛け合いは避けるべきです。法律に書いてあったとしても、それが上位規範である憲法からしてどうなのか、憲法ではなくても、その法律を研究している学問的にはどうなのか。私は、代表的な学説を持ち出して、紹介しているに過ぎませんが・・・(^^;。



 ちなみに、それに関連してですが、昨年12月24日(笑)、mixiに書いたことをコピペしますが、

3.刑罰を科す場合の憲法上の要請の一部
 (1)刑罰及びそれを科す手続は、法律で定めなければならない(憲法31条の解釈)。
 (2)行政機関の定める命令に、少なくとも丸投げしたり(「白紙委任の禁止」)、その法律には書いていないが、類似の規定があるからということを理由に処罰してはならない(「類推解釈の禁止」。民法では認められるけど、刑法では類推解釈は禁止です。)
 (3)法律で科すといっても、どのような行為がどういう犯罪になるのかをきちんと明確に書かなければならない(明確性の要請、憲法31条の解釈?)。
 (4)法律で明確だからといっても、無害な行為を処罰したり、過度に広範な規制をする法律*4違憲

 (2)について、チョットコメントしておくと、刑法の分野では類推解釈は禁止されているそうです。同じ結論をとるのであれば、許された拡大解釈でいけといわれています・・・。だけど、それは拡大する理由が必要なわけです。

 また、「白紙委任の禁止」は、先日チョットだけエントリーしたし、「明確性の要請」は一応、エントリー継続中というわけですね・・・(^^;。



 ところで、この話は、例えば、法律ができている場合の話(法解釈の問題)ですから、法律を新たに作ったり、改正する場面(法制定の問題)では一応違うということも蛇足ながら述べておきます・・・(^^;。

*1:着目しない場合、例えば、(a)歴史的解釈:過去の立法者がどのような意図で制定したのか(=「立法者意思」)を探究して現行法の意味を理解する方法。(b)目的論的解釈:法に内在する目的・価値を探究して解釈する技法。(c)社会学的解釈:関連する社会的事実を検討し、これを最重要視して政治的良識に合致する解釈を検討する方法、などがあるそうです。よくわかりません(^^;。

*2:憲法33条〜40条の規定に関する最高裁判決はあwせdrftgyふじこlp;(´・ω・`)。

*3:でも、キリンさんのほうがもっと好きです。(´・ω・`)。

*4:実は、こうは言っても、ひとつの法律が過度に広範な規制ではないとして、いくつかの法律を合わせるとどうなるんでしょうか、目的が別だったら良いんだろうか?という疑問はある。