成田新法事件・その1

 今日は、ちょっと凹む出来事があったので、簡単に。今日の話も、本当は、日本語文献だけで、3桁に届くくらい読まないといけないのではないでしょうか・・・(^^;。



刑事手続(?)における事前の告知・聴聞

 例のごとく、芦部信喜高橋和之補訂)『憲法 第三版[第三版]』(岩波書店、2002年)からの引用。まず、223頁。

 (憲法)31条の適正手続の内容としてとりわけ重要なのが、「告知と聴聞」(notice and hearing)を受ける権利である。「告知と聴聞」とは、公権力が国民に刑罰その他の不利益を科す場合には、当事者にあらかじめその内容を告知し、当事者に弁解と防禦の機会を与えられなければならないというものである。この権利が刑事手続きにおける適正性の内容をなすことについては、すでに判例も認めている。

 そこで挙げられている判例が、(本当は他にもあるのですが)、第三者所有物没収事件 *1です。この事件は、簡単に言うと、貨物の密輸を企てた被告人が有罪判決を受けた際に、その付加刑として、その貨物の没収判決を受けたが、その貨物の中に、被告人以外の第三者の所有する貨物が入っており、その没収に際して、事前にその第三者に告知・聴聞の機会を与えなかったことが、違憲であるとしたものです*2*3

行政手続における事前の告知・聴聞

 行政手続についても、「準用」されると一般に解されているということで、諸学説はパス。で、本題の成田新法事件、最大判平成4年7月1日、昭和61年(行ツ)11号事件、民集46巻5号437頁

 憲法21条との関係でも問題となりますが、憲法31条と行政手続のところの有名な部分をまず引用。

 憲法三一条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。
 しかしながら、同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である。

 簡単にまとめると、
1.憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものだが、行政手続について、刑事手続きではないとの理由ですべてが31条の枠外と判断するのは相当ではない。
2.行政手続が、仮に、31条の保障が及ぶ場合であっても、行政手続にはさまざまなものがあるから、告知聴聞が必要なのは、ケースバイケースである。
3.必要かどうかの判断基準は、総合衡量である。



 で、「行政手続には憲法31条の保障は一切及ばないとするのが判例である。」とか「行政手続についても、すべて憲法31条の保障が及ぶが、告知聴聞が必要なのはケースバイケースであるとするのが判例である。」とあれば、“×”なわけでつね。(´・ω・`)



 せっかく書き始めたので、もうチョット見ていきたかったのですが、今日はこのへんで・・・(^^;*4

*1:最大判昭和37年11月28日・昭和30年(あ)2961号事件・刑集16巻11号1593頁。ところで、最高裁のHPは、日付を1度入れれば、その日だけを検索できるようにして欲しいものです。

*2:ただし、最高裁によれば、没収判決は裁判所による最終判断であるのに対し、保釈金没収決定は、まだ裁判所による救済を求められるから、保釈金を納めた第三者に対する告知・聴聞は必要ないとしています。最大判昭和43年6月12日、昭和42年(し)7号事件、刑集22巻6号462頁

*3:この応用論点を研究されているのが、奥村弁護士です。参照、http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20050629/1120037457http://d.hatena.ne.jp/yjochi/comment?date=20050724#c

*4:本当は、このネタを機縁に、私は、結構、告知・聴聞を実際に求めたがるのであって、ある行為をする際には理由を聴きたいのだということを書きたかったのでありんした(^^;。そうそう、キスするときには、「キスをしてもいい?」と聞いてくれとか(嘘)。