謝罪広告について・その2

 今年の汚れ、今年のうちにです。(´・ω・`)

 12月23日の日記の続きです。


謝罪広告の仕組み

 まずは、民法不法行為法の条文の引用。

不法行為による損害賠償)
 第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

(財産以外の損害の賠償)
 第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。

名誉毀損における原状回復)
 第七百二十三条 他人の名誉を毀損した者に対しては、裁判所は、被害者の請求により、損害賠償に代えて、又は損害賠償とともに、名誉を回復するのに適当な処分を命ずることができる。

 まあ、簡単にまとめれば、裁判所は、被害者に請求により、他人の名誉を毀損した者に対して、名誉を回復する適当な処分を、損害賠償請求に代えて命ずることもできるし、損害賠償請求とともに命ずることもできるわけです*1*2

 さて、「名誉を回復する適当な処分」として、判例は、「謝罪広告」を認めています。これを認めたが、有名な謝罪広告事件*3です。

 さて、本日のエントリーでは、その当否はさておき、他人の名誉を毀損した者と裁判所が判断した者(以下、加害者という。)は、謝罪広告の掲載を命じられるわけです。もし、その義務に違反した場合、つまり、掲載をしなかった場合、どうするのかという問題が出てきますね。

 そこで、次は、民事執行法171条1項の条文です。

(代替執行)
第百七十一条 民法第四百十四条第二項本文又は第三項に規定する請求に係る強制執行は、執行裁判所が民法の規定に従い決定をする方法により行う。

 ということで、再び、民法の規定を見ないといけませんね。

第四百十四条 債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、その強制履行を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
 2 債務の性質が強制履行を許さない場合において、その債務が作為を目的とするときは、債権者は、債務者の費用で第三者にこれをさせることを裁判所に請求することができる。ただし、・・・
 3 不作為を目的とする債務については、債務者の費用で、債務者がした行為の結果を除去し、又は将来のため適当な処分をすることを裁判所に請求することができる。

 民法414条1項は余分だったかもしれませんが、引用しました。

 で、同条2項本文で、債権者(被害者)が、債務者(加害者)に対して謝罪広告を掲載するという「作為」を目的とする請求を裁判所にするわけですが、加害者の費用で第三者にさせるということで、民事執行法171条では、「代替執行」と呼ばれている。

 せっかくですので、もう1つ、民事執行法の条文を挙げておきましょう。171条1項。

(間接強制)
第百七十二条 作為又は不作為を目的とする債務で前条第一項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。

 つまり、代替執行ができない場合で、債務者の義務が履行されない場合に、履行を促進させるために、一定の金額を債権者に支払わせるもので、「間接強制」と呼ばれている、と。

 今日は、制度紹介だけでしたが、これにて。m(_ _)m

*1:この点を批判的に論ずる憲法学者の論考として、蟻川恒正「近代法脱構築」日本法社会学会編『法社会学58号』(有斐閣、2003年)29頁以下。

*2:ちなみに、遅ればせながらですが、有斐閣は“ゆうひかく”と読みます(^^;。

*3:最大判昭和31年7月4日、昭和28年(オ)1241号事件