mixiのメッセージでの質問に関連して・その1
先日、ある方から、メッセージで質問をされました。そのやり取りを大幅に加筆修正して(?)、こちらに掲載(もちろん、掲載は承諾済み。)。
質問をまとめると、
1. 日本国憲法で「国民主権」を定めている条文が2つあるとすると、前文と第1条になるのはなぜか?
2. 憲法前文に法的な意味はあるのか?
3. 1条の「国民主権」も、第三章の「国民の権利及び義務」に書かれているわけではなく、天皇の地位を定める1条に書かれているわけだから、ただの「お飾り」に過ぎないのではないのか?
4. 天皇を廃止するするために第1章を廃止すべきだという主張は、国民主権をも否定することにならないのか?
憲法の三大原理
まず前提。
憲法の三大原理が、「国民主権」・「基本的人権の尊重」・「平和主義」(戦争の放棄?)であることは、義務教育で学ぶところ。しかし、意外と、どこで定められているかを知らない人が多いような気がします。私もさっきまで・・・(´・(ェ)・`)。
冗談はさておき、ちょっとごまかすというか*1、説明を省略する意味も兼ねて、芦部信喜(高橋和之補訂)『憲法 第三版 第三版』(岩波書店、2002年)35頁から引用。
日本国憲法は、国民主権、基本的人権の保障、平和主義の三つを基本原理とする。これらの原理がとりわけ明確に宣言されているのが憲法前文である。
国民主権
日本国憲法において、「主権」という言葉が使われているのは、全部で3箇所。
3箇所だと、知っていたかって? ページを検索すると、すぐ見つかりますね・・・(*´∀`) 。
「主権」の意味の問題にも関係しますので、ここでは、2つ紹介。
- 前文1項1文*2
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。 (注:強調部はしが研が行った。以下、同じ。)
- 1条
第一条 天皇は、日本国の象徴であり日本国民統合の象徴であつて、この地位は、主権の存する日本国民の総意に基く。
ということで、「主権が日本国民に存する」ということが、前文と第1条で書かれていることがわかるわけですね。
前文の法的意味
ここも、芦部教科書から引用します。37頁です。
以上のような基本原理を明らかにしている日本国憲法の前文は、憲法の一部をなし、本文と同じ法的性質をもつと解される。したがって、例えば前文一項の、「人類普遍の原理・・・反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する」*3という規定は、憲法改正に対して法的限界を画し、憲法改正権を法的に拘束する規範であると解される・・・
というわけで、前文は、日本国憲法本文と同様に法規範性があって、その修正には憲法改正が必要であり、その内容によっては憲法改正権の限界の問題となります。
ちなみに、芦部先生もこの直後に書かれていますが、
通説によれば、「狭義の裁判規範性」、つまり、「当該規定を直接根拠として裁判所に救済を求めることのできる法規範」は否定されます*4。
(´-ω-`)うーん。メッセージだと短時間に書けたけど、ブログに書くと、えらく時間がかかってしまいますね。
ということで、このエントリーは、ここまで。