公務員採用試験問題の情報公開

 昨日の日記で、公務員試験試験問題の公開についてちょっと書きましたが、それで思い出したのが、高知県の教員採用試験問題の情報公開訴訟(最判平成14年10月11日、平成11年(行ヒ)第28号事件*1




要旨だけ引用すると、

要旨:
 公立学校の教員採用選考の筆記審査の問題とその解答が高知県情報公開条例所定の非開示事由に該当しないとされた事例

 「そうか〜、一般の公務員の試験問題も公開すべきだと判決は言っているんだ」と即断してはいけません。条例に即して非開示事由に当たらないと判断しただけかもしれませんから(笑)。実際に、「公開」*2している自治体は少ないはず。

 そうそう、試験問題を「公開」していたとしても、採点基準、自分の解答用紙を開示できるかどうかは一応別問題。東京都の保育士の事案ですが、試験問題の非公表にも波及しそうな下級審判例です*3

 解答用紙及び問題ごとの配点と得点の開示は,この試験制度の趣旨,目的に合致しない面があることを否定できず,「事務の適正な執行に支障が生ずるおそれ」があるといわざるを得ない。すなわち,前記のとおり,開示することにより,一方においては,採点及び合否判定の過程を透明化し,健全な批評,批判を通じて試験の適正の確保を実現するという効果を期待することができるものの,他方においては,試験委員のなり手の確保が困難となり,試験問題が不適切なものになりがちになり,試験委員及び事務局において質問に対する回答を するための事務が増加するおそれに加えて,採点基準が推定されて受験技術が発達し,機械的,断片的知識しか有しない者が高得点を獲得する可能性があるという,いわば副作用ともいうべき難点がある。そして,全体としてみると,現時点において,開示のこの弊害は,相当程度現実的なものとみられるのに対し,開示に伴う事務の透明化が,上記副作用を押さえて試験の適正化を実現する蓋然性は低いと考えざるを得ず,この副作用がある以上,解答用紙及び問題ごとの配点と得点の開示は,保育士試験の実施に関する東京都の事務の適正な執行に支障を生ずるおそれがあるものと評価せざるを得ないのである。



*1:この事件は、最高裁のHPではヒットしないようです。リンクをはらせていたいだいた、“りんりんマガジン”の資料室は、若干情報が古いですが、いろいろ参考となります。

*2:厳密に言えば、試験問題を受験者が持ち帰ることができる場合、情報公開請求をすれば開示してもらえる場合、コピーまでできる場合、ネットで公開している場合など分かれますが。

*3:一般職の国家公務員採用試験の試験問題の持ち帰りは、「情報公開」の流れを踏まえての話だったはずなんですがね。